ひたすら受験問題を解説していくブログ
東京大学2009年前期物理第3問
常温の水は液体(以後単に水という)と気体(水蒸気)の2つの状態をとることができる。どちらの状態をとるかは温度と圧力により,図3-1に示すように定まる。たとえば,水をシリンダーに密封して温度を30℃,圧力を7000Paにしたときは水であり,熱を与えて,温度や圧力を多少変えても全部が水のままである。一方,同じ30℃で,圧力1000Paにしたときはすべて水蒸気である。ただし,図3-1のB点,C点のような境界線上の温度と圧力のときは水と水蒸気が共存できる。逆に,水と水蒸気が共存しているときの温度と圧力はこの境界線(共存線)上 の値をもつ。温度を与えたときに定まる共存時の圧力を,その温度での蒸気圧という。一定の圧力で共存している水と水蒸気に熱を与えると,温度は変わらず に,熱に比例する量の水が水蒸気に変わり,全体の体積は膨張する。単位物質量の水を水蒸気に変化させるために必要なエネルギーを蒸発熱と呼ぶ。

このことを参考にして,図3-2に示す装置のはたらきを調べよう。断面積A[m2]で下端を閉じたシリンダーを鉛直に立てて,物質量n[mol]の水を入れ,質量m1[kg]のピストンで密閉し,その上に質量m2[kg]のおもりを乗せる。シリンダーの上端を閉じてピストンの上側を真空にする。ピストンはシリンダーと密着してなめらかに動くことができるが,シリンダーの上方にはストッパーが付いていて,ピストンの下面の高さがL[m]に なるところまでしか上昇しないようになっている。シリンダーの底にはヒーターが置かれていて,外部からの電流でジュール熱を発生できるようになっている。 以下の過程を通じて,各瞬間の水と水蒸気の温度はシリンダー内の位置によらず等しいものとする。また,圧力の位置による違いは無視する。

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20℃での蒸気圧をp1[Pa],30℃での蒸気圧をp2[Pa]と記す。ピストンのみでおもりをのせないときに内部の圧力がp1で,ピストンにおもりをのせたときにp2になるようにしたい。m1とm2を求めよ。重力加速度の大きさをg[m/s2]とする。


圧力p2での20℃の水のモル体積(1mol当たりの体積)をv1[m3/mol]とする。この温度でおもりをのせた状態でのシリンダー内の水の深さd[m]を求めよ。なお,ヒーターの体積は無視できる。


装置全体を断熱材で覆い,ピストンにおもりをのせたまま,はじめ20℃であった水をヒーターでゆっくりと30℃になるまで加熱する。このとき,水の状態は図3-1のA点からB点に移る。20℃から30℃までの水の定圧モル比熱は温度によらず,c[J/(mol・K)]であるとする。水を30℃にするためにヒーターで発生させるジュール熱Q1[J]を求めよ。なお,シリンダー,ピストン,おもり,断熱材など,水以外の物体の熱容量は無視できるものとする。


30℃の水をさらにヒーターでゆっくりと加熱する。このときの温度と圧力はB点に留まり,水は少しずつ水蒸気に変化していく。図3-3のようにピストンがストッパーに達したときにも水が残っていた。B点での水のモル体積v2 [m3/mol]とB点での水蒸気のモル体積v3[m3/mol]を用いて,このときの水蒸気の物質量x[mol]を求めよ。


30℃の水を,その温度での蒸気圧の下で,水蒸気にするために必要となる蒸発熱をq[J/mol]とする。問Ⅳの過程で,ピストンがストッパーに達するまでに,ヒーターで発生させるジュール熱Q2[J]を求めよ。


ピストンがストッパーに達したときにヒーターを切り,おもりを横にずらして,ストッパーにのせる。次にまわりの断熱材を取り除き,18℃の室内で装置全体がゆっくり冷えるのを待つ。

(1) 時間の経過(温度の低下)とともに,圧力がどのように変化するか述べよ。

(2) 時間の経過(温度の低下)とともに,ピストンはストッパーに接した位置と水面に接した位置の間でどのように動くか,動く場合にはその速さ(瞬間的か,ゆっくりか)を含めて述べよ。

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解説


一瞬化学かと思う状態変化の内容です。物理としてはなじみが薄いですが、化学選択者にとってはよくある内容で、それを物理と絡めた感じで理解しやすかったでしょう。VI以外は東大受験生を馬鹿にしているの?というレベルで簡単なので、落としたくない感じです。VIはパッと思いつかなければ、実際の試験だと無視して化学にでも時間費やした方がいい気がします。

I
圧力はかかる力を面積で割るだけです。よって、
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II
体積はnv1でこれがAdです。よって、d=nv1/A

III
単位からでもわかるとおり、定圧モル比熱にモルと温度差をかけるだけのお仕事です。よって10nc。

IV
素直にxを使って式を立てます。xはmolで、与えられているのがm3/molなので、考えなくとも体積で式を立てるのが自然でしょう。
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V
熱はすべて蒸発に使われているので、qにmolつまりxをかけるだけです。
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VI
こういう問題は微小な変化の繰り返しで考えるとわかりいいです。

外が18℃ということはどんどん熱が奪われていきます。熱が奪われると水や水蒸気の温度が下がるか、液化して水になるかの2択です。
実際には起きないのですが、水と水蒸気が共存したまま、上であげた事象を起こしてみるとどうなるのかわかります。
例えば前者で考えてみると、温度が下がってしまう場合、図3-1ではAとBの間に来てしまいます。こうなると、すべて水でなくてはならないので、存在している水蒸気は液化しようとします。液化の際には、気体状態にある物質量の減少がおこり、圧力がp1をくだらない限りピストンは落ちないため、体積は一定であるゆえ、圧力が下がります(一応この時に熱を出しますが、シリンダー内の総熱量が減少していくことを考慮すれば、発生した熱の少なくとも一部は外に出て行くと考えて差し支えありません)。
よって、図3-1でいう下側に向かって状態が変化します。するとまた共存線にぶつかって、共存状態でいられるところに落ち着きますが、また、熱が奪われるので繰り返しになります。

これが、微小な変化として起こるので、圧力がp1をくだらない限り、共存線に沿って左下にいくことになります。

圧力がp1になると、ピストンの運動方程式的に水蒸気の圧力が下がると、水蒸気圧とp1が釣り合う体積になるまでピストンが下がります。つまり、Cの左に少しでも行こうものなら圧力一定のままで、水になろうとします(実際にはCの左に行ったところで、液化の際に発生する熱で右に押し戻されます。ただ、その熱の一部は外部に逃げるので、その熱の分だけ液化が進む感じです)。

よって、圧力はp1のまますべて液化します。その後は圧力一定で水の温度が18℃まで下がるだけです。

また、この変化は外部に熱が奪われることによって起こるので、熱の移動がボトルネックになります(持っている熱量が同じなら液化と蒸発は平衡状態なので)。問題文にゆっくり冷えるとある通り、というか熱の伝達速度は温度差に比例定数をかけた有限なものなので、上記の変化はゆっくり起こります。

(1)
圧力は共存線に沿ってゆっくりとp1まで低下した後、p1から変化しない。

(2)
ピストンはしばらくストッパーの位置に静止したままであるが、圧力がp1に達して以降はゆっくりと降りていき、水蒸気がすべて液化すると水面に接する。その後は水に接したままである。
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東京大学2009年前期物理第2問
図2のように,紙面内の上から下向き(x軸の正の向き)に重力(重力加速度の大きさg)がはたらき,紙面に垂直に裏から表の向きに一様な磁場(磁束密度の大きさB)が,EFとGHの間の領域だけに加えられている。EFとGHは水平である。抵抗R,質量mの一様な導線を一巻きにして作った高さa,幅bの長方形のコイルABCDを,磁場のある領域の上方から落下させる。その際,ABCDは紙面内にあり,BCがx軸と平行となるように,常に姿勢を保つようにした。EFとGHの距離はコイルの高さaに等しい。導線の太さはaやbに比べ十分小さく,EFはbに比べ十分長いものとする。また,自己誘導や空気抵抗は無視し,地面との衝突は考えないものとする。

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Ⅰ 時刻t=0に,ABとEFの距離がhとなる位置から初速度0でコイルを落下させた。
(1) ABがEFに到達する時刻t1と,その時のコイルの速さv1をhを用いて表せ。

(2) ABがGHに到達する時刻をt2とする。ある時刻t (t1<t<t2)に,コイルが速さvで落下しているとする。このとき,コイルにはたらく合力(x軸の正の向きを正とする)をvを用いて表せ。

(3) ABがEFに到達する時のコイルの速さv1の値によって,時刻t1からt2の間にコイルが加速する場合と減速する場合がある。それぞれの場合における,v1の条件を記せ。

Ⅱ 時刻t1からt2の間コイルが等速度で落下するように,時刻t=0におけるコイルの位置をうまく調整してから,初速度0で落下させた。

(1) この場合の,時刻t=0におけるABとEFの距離と時間t2-t1を求めよ。

(2) 時刻t1からt2の間に,コイルで消費される電力Pと熱として発生するエネルギーWを求めよ。

(3) DCがGHに到達する時刻をt3とする。時間t3-t2を求めよ。また,落下開始から,磁場のある領域を十分離脱するまでの,コイルの速さの時間変化を表すグラフを描け。グラフには,t=t1,t2,t3 (具体的な式は不要)と,それらの時刻における速さの式を記せ。

解説

理三受験生ではなくても、満点をとりに行ってよい大問です。標準を超える設問は一つもないため、如何に早く解いて物理の残りというか実際の試験だと化学に時間をまわすかの勝負です。


(1)
ただの自由落下です。
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(2)
この設問で聞いているのはAB側が磁場内に入って移動している場合の力を求めろということです。
コイルには誘導起電力による電流が流れるので、その電流によってローレンツ力がかかります。
まず誘導起電力はコイルを貫く磁束の変化率であり、抵抗がRなので、
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であり、向きはレンツの法則より、磁束の変化を打ち消す方向になるため、B→A方向に流れます。
これにかかるローレンツ力はフレミングの左手の法則によってxの負の向きで、その大きさは
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となります。これ以外にかかる力は重力のみなので、
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(3)
加速減速は運動方程式よりかかる力に比例するので、(2)で求めた力がどっち向きかということです。
正なら加速、0なら等速直線運動、負なら減速です。よって、
加速は
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減速は逆なので
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(1)
距離は、Ⅰ(3)で述べたように等速だと合力0なので、速度は(3)の不等号が等号になったものです。これをⅠ(1)とリンクさせれば、
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時間は等速運動なので、距離を速度で割るだけです。
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(2)
運動エネルギーが一定なので、エネルギー保存則から、発生エネルギー=位置エネルギーの減少量となります。
よって、落下した距離がaなので、W=mga。
単位時間当たりなのでtで微分(距離であるaが微分されてvになります)してP=mgvになります。等速直線運動なのでかかった時間でW割ってもいいです。
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エネルギー保存則は力学的エネルギーだけではなく、ジュール熱やコンデンサーの静電エネルギー、コイルの磁界エネルギーなどを巻き込んで成立します。電磁気分野ではよくジュール熱計算をエネルギー保存則でやるので慣れましょう。

計算が面倒ですが、電流からで求めてもいけます。
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(3)
磁束が減少して行きますが、その減少具合はABが突入してきた際の増加具合と同じなので、結局のところ同じ運動方程式、つまり等速直線運動になります(コイルに流れる電流は逆になりますが、力を受ける辺がABではなくDCになるため、その部分の電流は同じ向きで同じ大きさです)。
よって
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DCがGHを超えれば自由落下なので、グラフは次のようになります。
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東京大学2009年前期物理第1問
図1-1のように,鉛直に固定した透明な管がある。ばね定数kのばねの下端を管の底面に固定し,上端を質量mの物体1に接続する。質量が同じくmの物体2を,物体1の上に固定せずにのせる。地面上の一点Oを原点として鉛直上向きにx軸をとる。ばねが自然長になっているときの物体1のx座標はhであり,重力加速度の大きさはgである。
なお,物体の大きさは小さく,管との摩擦や空気抵抗は無視でき,x方向以外の運動は考えない。ばねの質量は無視できる。また,管は十分長く,実験中に物体が飛び出すことはないものとする。

Ⅰ 物体1と物体2を,互いに接した状態で,物体1のx座標がxAとなる位置まで押し下げ,時刻t=0に初速度0で放したところ,物体1と物体2は互いに接した状態で単振動を開始した。

(1) この時の,物体1の単振動の中心のx座標を答えよ。

(2) 物体1と物体2のx方向の運動方程式をそれぞれ書け。各物体の加速度をa1,a2,物体1の位置をx,互いに及ぼす抗力の大きさをN (N≧0)とせよ。

(3) xAの値によっては,運動中に物体1と物体2が分離することがある。図1-2はこのような場合の物体の位置の時間変化を示す。運動方程式を使って,分離の瞬間の物体1のx座標を求めよ。なお,図1-2では物体の大きさは無視されており,接している間の物体1と物体2の位置を1本の実線で表している。

(4) 分離の瞬間の物体1の速度を答えよ。また,分離が起きるのは,時刻t=0における物体1の位置xAがどのような条件を満たす場合か答えよ。
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Ⅱ 物体1と物体2が分離した後の運動について考える。分離後,物体1は単独で単振動する。物体2は重力のために,分離後ある時間が経過した後に必ず物体1に衝突する。分離から衝突までの時間は時刻t=0における物体1の位置xAに依存する。ここで,分離から衝突までの時間が,物体1が単独で単振動する際の周期Tに等しくなるように,xAの値を設定した。衝突の時刻をT1とする。

(1) 物体1が単独で単振動する際の周期Tを答えよ。また,物体1と物体2が衝突する瞬間(時刻T1)の物体1のx座標を答えよ。

(2) 分離の瞬間の物体2の速度をVとする。分離から衝突までの時間がTとなるためのVの満たす式を書け。

(3) 物体1と物体2の間のはねかえり係数は1であるとし,時刻T1における衝突以降の運動を考える。物体1と物体2が,T1以降に再び接触する時刻T2と,そのときの物体1のx座標を答えよ。また,時刻t=0から2T1までの間で,横軸を時刻,縦軸を物体の位置とするグラフの概形を描け。物体の大きさは無視し,物体1と物体2が接した状態で運動している部分は実線,分離している部分は点線を用いよ。なお,横軸,縦軸共に,値や式を記入する必要はない。

(4) この場合のxAをh,m,k,gを用いて表せ。

解説

後半は少し複雑な運動になるので、Ⅱ(3)のグラフで引っかかる人がいるかもしれません。基本的な事項の積み重ねレベルを脱しない内容なので、衝突する場合にはどのように処理するのかといったことを反射的に処理できるように重問などで鍛えておけばいいでしょう。


(1)
重力がある単振動の中心は釣り合いの位置になります。これは以下の加速度の方程式からわかります。
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(2)
物体1が受ける力は、バネによる力、重力、物体2から受ける抗力です。一方、物体2が受ける力は重力と物体1から受ける抗力です。図を描いて接しているもの間(例えば、バネと物体1、物体1と物体2、今回は0ですが物体と管)の力、重力を考慮する癖をつけましょう。電磁気がらみならそれに電界や磁界を加えて考えます。
よって、
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(3)
物体が離れるとは、抗力=0は反射的に思いついて欲しい事項です。もしパッと思いつかない場合には、自分が今まで解いた物体が離れる系の問題で何をやったか思い返してみてください。

まあ実際のところ抗力=0は必要条件であって十分条件ではなく、a1=a2という条件を満たすと仮定した場合に、Nが負になる領域が存在することが必要十分条件だと思いますが(xがhまでしかいかないなら離れないということです)。

上の式をa1=a2としてNについて解くと、
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となり、x=hで離れます。

(4)
エネルギー保存則で行くか、こつこつ運動方程式を微分方程式として解くかです。途中を関数で与える必要がないときは前者が楽です。
注意すべきは重力の位置エネルギーを忘れないことですが、初めからバネに組み込んで(釣り合いの位置を自然長的に扱う)解く手法もあります。
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2行目はX2-Y2の因数分解公式を使っています。バネといい運動エネルギーといい2乗のものは良く出てくるので重宝します。

vが存在すること、つまりvが0より大きい実数であることから、
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この方法は少し数学的なので、普通にいくと、単振動がhを超えればいいので、初めの位置と振動の中心の距離>hと振動の中心の距離で解く感じでしょうか?
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(1)
ごく普通の単振動です。重さが2mでなくmになることに注意すると、
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のいつもの奴です。
次に位置は、ちょうど単独単振動の1周期なので元の位置に戻ります。よってhになります。

(2)
ただの放物運動なのでV-gt=0で頂点までの時間が出ます。対称性から2倍するとTなので、V=gT/2

(3)
衝突以降といわれているのでとりあえず衝突させてみます。はねかえり係数1で重さが同じなので、速度の交換が起きます(はねかえり係数の定義と運動方程式を連立させれば出ます)。
衝突時は物体1は単に1周期回っただけなのでV、物体2は放物運動なので-Vです。よって、衝突後は物体1は-Vで物体2はVになります。
物体1が単振動であることと物体2が放物線であることに注意すれば、また1周期後にぶつかることがわかります。
よって、T2=T1+Tであり、高さはhのままです。
この時の速度は共に-Vなので、合体して元の2物体の単振動に戻ります。
また、これらの運動はT1を中心として対称なので2T1では初めの状態に戻っています。

単振動の中心や周期が変わることに注意して書くとグラフは次のような概形になります。
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(4)
(2)のVとⅠ(4)のvが同じになります。よって、
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東京大学2009年前期物理解説
東京大学2009年前期物理の解説です。第2問は簡単め、第1問と第3問は普通といった感じですが、第3問VIは難しいと思います。それ以外は対称性を利用するなどして如何に効率よく処理していくかが点数の分かれ目の気がします。

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東京大学2008年前期物理第3問
図3-1のように,十分な高さLをもった,断面積Sの円筒容器にnモルの気体を入れて密閉し,気体の絶対温度を一定の値Tに保つ。このとき,一様な重力の作用下では,気体の密度は容器の底に近いほど大きく,密度に勾配のある状態になる。容器の底から測った高さをz,単位体積当たりの気体のモル数をcとすれば,cはzの関数とみなすことができ,関係式
   c(z+Δz)-c(z)=-αΔzc(z)   (*)
がよい近似でなりたつ。ここで,Δzは高さの差であり,αは高さzによらない比例係数である。αΔzは十分小さいものとする。また,気体1モルあたりの質量をm,気体定数をR,重力加速度の大きさをgとする。

容器内の気体を理想気体とみなして,以下の問に答えよ。
(1) 高さzにおける気体の圧力をp(z)とする。p(z)をc(z),TおよびRを用いて表せ。

(2) 図3-2のように,高さzの位置にある,厚さΔz,断面積Sの気柱に注目する。ここで,高さz,z+Δzにおける気体の圧力はそれぞれp(z),p(z+Δz)である。また,気柱内のc(z)の変化は十分小さく,気柱内の気体のモル数はc(z)SΔzで与えられるものとする。この気柱にはたらく鉛直方向の力のつり合いを表す式を与えよ。

(3) 上の(1),(2)の結果から,関係式(*)の係数αをm,g,TおよびRを用いて表せ。

(4) 気体の温度が一様に13℃の場合に,単位体積あたりの気体のモル数cが0.10%減少するような高さの差Δzを求めよ。ただし,気体1モルあたりの質量はm=1.3×10-1kg/mol,気体定数はR=8.3J/mol・K,重力加速度の大きさはg=9.8m/s2とする。

(5) 容器の底と上端での単位体積あたりの気体のモル数の差c(0)-c(L)をm,g,T,R,nおよびSを用いて表せ。


図3-3のように,軽くて変形しない小さな物体を容器内の気体の中に入れておいたところ,やがて高さz0の位置で静止した。物体の体積をv,質量をMとして,以下の問に答えよ。
(1) 高さz0における単位体積あたりの気体のモル数c(z0)をM,vおよびmを用いて表せ。
(2) 物体が高さz=z0+Δz(Δz>0)にあるとき,物体にはたらく力Fの大きさをM,g,α,およびΔzを使って表し,また,その向きを答えよ。ただし,Δzは十分小さく,関係式(*)がなりたつものとしてよい。
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解説


標準的な問題で、行っていることさえ分かれば基本問題です。今回はあまりメリットはないですが、微積OKなら関数としてさくっと求められてしまう問題です。簡単な微分方程式は高校生に教えてもいいのではないでしょうか。そのほうが物理の見通しも良くなる気がします。

I
(1)
圧力とモル濃度の関係なので、いつものあいつです。状態方程式をVで割って、
p(z)=c(z)RT

(2)
圧力×面積がかかる力で、モル濃度×体積がモル数になるので、
p(z)S-p(z+Δz)S-c(z)SΔzmg=0

(3)
(1)を(2)に代入して整理します
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(4)
*をc(z)で割ったものが増加率です。気温や質量は出題者が決めれる数字なのできれいに消せる候補だと思ったらその通りでした。
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よって1.9m

(5)
一見*かと思う方もいそうですが、*の利用の条件はαΔzが小さいことです。Lは十分大きいため使えません。
ここまでの設問の結果や過程が使えないか、問題文にnがあることなどを考慮すれば全体の釣り合いの式で行くアイデアは出てくるのではないでしょうか。
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II
(1)
静止したようなので釣り合いです。浮力は物体にどかされた流体にかかる重力になるので、
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(2)
方向は鉛直下の方が気体の密度は大きいことからΔz>0なら浮力が小さくなることがわかるので、鉛直下向きです。
ちゃんと計算すれば、かかる力の変化量はのけた気体にかかる重力の変化量なので、*にvmgをかけたものになります。
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東大入試において、このような定性的な問いには式を立てなくても答えられることが多いので、日ごろから定性的な観点でも考える癖をつけておきましょう(私は物理屋ではないので数式だけでいいじゃん派ですけど)。

【参考】
*の段階で関数の形が決まります。差分で書かれてるのを微分に直し、積分します。
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これに体積Sdzをかけて0からLまで積分するとnとなります(Lは十分大きいとあるのでLから来る部分は0にしてもいい気がします)
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I(5)は代入すると
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となります。また、各地点での圧力はその上に乗っている気体の重さなので、
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となります。

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東京大学2008年前期物理第2問
図2-1のように,電圧を自由に変えられる直流電源とコンデンサーAおよびコンデンサーBを直列につなぎ,コンデンサーAと並列にネオンランプをつなぐ。このネオンランプは図2-2に示す電圧-電流特性を持ち,端子間にかかる電圧がVonに達すると点灯する。点灯したネオンランプは,電圧はVonを下回っても発光を続けるが,電圧がVoffまで下がると消灯する。なお,ネオンランプの電気容量は無視できるものとし,コンデンサーA,Bの電気容量をそれぞれCA,C Bで表す。


すべてのコンデンサーを放電させた後,電源電圧Vを0から少しずつ上げていくと,ある電圧V1でネオンランプが点灯し,その後,消灯した。以下の問に答えよ。ただし,答はCA,CB,Von,Voffを用いて表せ。また,ネオンランプが点灯してから消灯するまでの間,電源電圧は一定であるものとしてよい。

(1) このときの電源電圧V1を求めよ。

(2) 点灯直前にコンデンサーA,Bに蓄えられていた静電エネルギーをそれぞれWA,WBとおき,消灯直後にコンデンサーA,Bに蓄えられている静電エネルギーをそれぞれW’A,W’Bとおく。この間の静電エネルギーの変化ΔWA=W’A-WAおよびΔWB=W’B-WBを求めよ。

(3) 電源は,電源内で負極から正極へ電荷を運ぶことにより,ネオンランプおよびコンデンサーにエネルギーを供給している。また,ネオンランプが点灯してから消灯するまでの間に電源が運んだ電荷の量は,この間にコンデンサーBに新たに蓄えられた電荷の量と等しい。ネオンランプが点灯してから消灯するまでの間に電源が供給したエネルギーWEを求めよ。

(4) 点灯してから消灯するまでの間にネオンランプから光や熱として失われたエネルギーWNを求めよ。


ネオンランプの消灯後,さらに電源電圧VをV1から少しずつ上げていくと,ある電圧V2でネオンランプが再び点灯し,その後,消灯した。以下の問に答えよ。


(1) 問Ⅰにおいて,点灯してから消灯するまでの間にネオンランプを通過した電荷の量をQとする。電源電圧VがV1を超えてV2に達するまでの間,コンデンサーAにかかる電圧VAをCA,CB,Q,Vを用いて表せ。ただし,この間,ネオンランプに電流が流れることはないため,図2-1の回路は図2-3の回路と等価である。また,電荷がコンデンサーを通り抜けることはないため,コンデンサーA,Bに蓄えられている電荷をそれぞれQA,QBとおけば,コンデンサーAの下側の極板とコンデンサーBの上側の極板をつないだ部分に蓄えられた正味の電荷の量QB-QAはVによらず一定であり,Qと等しいことを用いてよい。

(2) 点灯時の電源電圧V2をCA,CB,Von,Voffを用いて表せ。
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解説

やたらと誘導がついていて、その通りにやっていけば解けてしまう問題です。難関校をめざす人は誘導無や設問飛ばしにあっても解ける力が欲しいところです。力学以外の分野においてもエネルギー保存則はかなり有効なので、こういう問題を解いた後には、エネルギー保存則をどのように使い、そのためにどのような事前準備(その前の設問)をしているのか整理しておきましょう。

I
(1)
電圧を求めろと言われているので、電圧降下の式を書いて解きます(電荷保存則よりコンデンサーAもコンデンサーBも同じ電荷です。QをVonから求めて処理しています。)
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(2)
静電エネルギーはQ=CVをdVで積分したものなので、CV2/2です。
まず、Aから各時点での電圧を代入して計算すると
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次にBも各時点の電圧で計算してやります、その際にコンデンサー2つので電圧の和が電源電圧と等しいことを利用します。
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(3)
電源によって運ばれた電気量をΔQとすると、WE=ΔQV1になります(電圧=電荷1の粒子の位置エネルギー=電荷1に電場×距離)。不明なものはΔQですので、これを求めますが、問題文にあるように新たにBに蓄えられた電荷と等しいので(注:コンデンサーAの電圧が下がっているので、電源ではなくコンデンサーAによって運ばれた電荷も存在しています)、
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(4)
これがIでやりたいことで、そのためにエネルギー保存則を使いたくて前問までの事項を聞いています。なので、(4)だけ出されても、自分で(4)→(3)→(2)→(1)という設問を思いつくように普段から設問の構造を理解し、応用できるようにトレーニングして欲しいところです。

総エネルギーが保存されるので(V1は残して計算したほうがすっきり行きますが、誘導上ちゃんと計算しました。)、
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II
(1)
色々長いですが、電圧Vでコンデンサー間の正味電荷がQの場合の直列コンデンサーです。基本問題です。以下の式において出てきてはいけないものはVBであり、その派生のQBでもあります。これを消すことを念頭に進めます。
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(2)
(1)の途中の式に代入して解きます。VA=Vonです。
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さて、ここで邪魔なのがQなので、Qを求めます。1回目の消灯時で考えていいので、
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【参考】n回の点灯
実際にやるとコンデンサーBが電圧に耐えられず壊れるのでしょうが、n回点灯するときの各エネルギーや電圧を考えて見ます。やることは本問と全く同じですので、こっちで出しても良かったのではないでしょうか。

それぞれを本問で出てきた記号の末尾に添え字をつけて表記することとします(Qnはn回目の電荷の流入量ではなく、n回目の消灯後のコンデンサー間に溜まった正味電荷とします)。
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となり、ネオンランプで消費されるエネルギーはnによらないものになります。実のところ、こんな結果はQnの差分が一定とわかりさえすれば、ネオンランプが図2-2の電圧電流特性を持っているため計算不要で分かってしまいますが。

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東京大学2008年前期物理第1問
質量mの箱が摩擦のない滑らかな水平面上に静止していたとする。この箱を,時刻0から移動させ始めてちょうど時刻Tに距離Lだけ離れた地点を通過させることを考えよう。A,B,Cの3人がそれぞれ別々の力の加え方をして箱を移動させた。Aの箱は最初から最後まで一定の加速度で運動した。Bの箱は距離L/2の中間地点まで一定の加速度で加速し,中間地点以降はその時の速度で等速度運動をした。Cはばねを用いて移動させた。図1のように,ばねが自然長の状態で箱がゴール地点にあるようにセットし,そこからばねを長さLだけ縮めて初速0で離した。A,B,C全ての場合において,箱は時刻0で静止した状態から動き始め,一直線上を同じ向きに進み,時刻Tにスタート地点から同じ距離Lだけ離れた地点を通過した。
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Ⅰ Cが用いたばねのばね定数kをm,Tを用いて表せ。

Ⅱ A,B,Cそれぞれの場合について,箱の速さv(t)を時刻t (0≦t≦T)の関数としてグラフにし,各々の場合の時刻Tにおける速さv(T)をT,Lを用いて表せ。

Ⅲ A,B,Cそれぞれの場合について,時刻Tまでに箱にした仕事をm,T,Lを用いて表し,どの場合が最も仕事が少なかったか答えよ。またそれぞれの場合について,箱にした仕事とⅡで求めた速さv(T)との関係を求めよ。

Ⅳ 箱を静止した状態から動かし始め,最小の仕事でちょうど時刻Tに距離Lだけ離れたところを通過させるための力の加え方を求めたい。ただし,箱に加えることのできる最大の力をF0とし,F0はA,B,Cの加えたどの力よりも大きいとする。また運動の向きと逆向きの力を加えることはないとする。箱にする仕事が最小の場合について,箱に加えた力F(t)の時間変化をグラフにし,時刻Tまでに箱にした仕事を答えよ。 


解説


基礎的な力学の事項、特に仕事とエネルギー保存則についての理解を問う問題です。IIIまではかなり標準的な問題なので、IVで本問において言わんとしていることをつかめたかが、点数の分かれどころかと思います。IIIでわざわざそれぞれの場合についての関係を問いているのが多分誘導です。

I
Lの位置は自然長で、t=0の位置も速度も0なので、Lの位置は1/4周期に相当します。よって、
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II
[A]
等加速度(aとする)運動なので、
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ここでx'(0)=0,x(0)=0,x(T)=Lという条件を代入すると、c=0,b=0,a=2L/T2となり、v(t)=at=2Lt/T2で、グラフは次のようになります。
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[B]
x=L/2までは等加速度運動ということは、Aのv(t)とそこまでは似た形になり、それ以降は定数になる、つまり、台形ということになります。進む距離はv(t)下側の面積になるので、x=L/2までの三角形部分とそれ以降の長方形部分にわけると、その時間比は2:1になります。よって、x=L/2以降の所要時間はT/3です。この時間でL/2進む速度がv(T)なので、v(T)=3L/2Tとなります。よってグラフは次のようになります。
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[C]
位相が-π/2から始まる振幅Lのsinカーブで、x=Lつまりt=Tで位相が0です。微分すると同位相のcosカーブになるので、v(t)=Lωcos(ωt-π/2)=(πL/2T)sin(π/2T)tで、グラフは以下のようになります。
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III
仕事によって物体は運動エネルギーを得ているので、エネルギー保存則からABCのすべてにおいて、W=mv(T)2/2が成立しています。
この関係式にIIで求めたv(T)を入れると、
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となり、Bが一番小さくなります。

IV
IIIの結果というかW=mv(T)2/2より、v(T)が小さければ仕事が最小です。負の力を加えることはないことからv(t)が単調増加であり、また、v(t)の0からTまでの積分が一定(=L)であることから、より早い段階から速度が大きいものの方が、最終的な速度が小さくなることがわかります(早い段階の距離の稼ぎを後半で帳尻合わせてなくすためには、その分だけ最終的に遅くなるということです)。
よって、初めから全力のF0で加速させ、後半なにもしないものが最も最終的な速さv(T)が小さくなり、Wも小さくなります。
以上から、加速をやめる時刻をT1とするとv(t)およびF(t)は下図のようになります。
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T1まではF0/mの加速度なので、最終速度はT1F0/mです。よってv(t)グラフの台形の面積=Lで等式を立てると、
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ここからv(T)経由でWを求めると、
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東京大学2008年前期物理解説
東京大学2008年前期物理の解説です。本年は特別難しい設問はありませんが、あえて言うならば、第1問で気づけなくて失点してしまうぐらいでしょうか。また、物理というか理解力の問題として、第2問のネオンランプが難問に感じる人もそこそこいそうです。いずれにしても、物理が得意と言い切れる層には温めの構成です。

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東京大学2007年前期物理第3問
図3-1のように,水面上で,波長λの波が左から右にまっすぐ進み壁に垂直に衝突している。壁に沿った方向をx方向とし,壁には自由にすき間を開けることができるようになっているとする。すき間を通った波を壁の右側の点Pで観測する。以下の問に答えよ。

点Pは十分遠方にあるとし,図3-1のようにx=0から見たP方向の角度をθとする。問Ⅰ(1),(2)で開けるすき間はすべて同じ幅とする。また,そのすき間の幅は波長λに比べて小さいので,各すき間からは,そこを中心とする円形波が図の右側に広がっていくと考えてよい。

(1) 壁のx=0の位置にすき間Aを開け,わずかにずれた位置x(x>0)にすき間Bを開ける。すき間Bを開ける位置を少しずつxの正の方向に動かしていくと,x=bになったとき,それまで振動していた点Pでの水面が初めて動かなくなった。bをλとθ を用いて表せ。ただし点Pは十分に遠いので,すき間Bから見たP方向の角度もθ としてよい。

(2) 問Ⅰ(1)のようにx=0とx=bにすき間がある状態で,すき間Cをx=c(0<c<b)に開けると,点Pでの水面は振動を始めた。さらにもう一つ,x=bにできるだけ近い位置にすき間Dを開けることによって,点Pでの水面の振動を止めたい。すき間Dのx座標を求めよ。


次にすき間の幅が広い場合を考えよう。点Pは問Ⅰと同じ位置にあるとする。すき間の一方の端をx=0,他方の端をx=wとする(図3-2)。以下の問については,すき間内の各点から円形波(素元波)が右に広がっていき,その重ね合わせが点Pでの水面の振動になると考えよ。

(1) すき間内のある位置x=x1 (0<x1<w)から点Pまでの距離と,すき間の端x=0から点Pまでの距離の差を,x1とθ を用いて表せ。
(2) x=0から出た円形波の変位が点Pでゼロである瞬間に,すき間内の各点x=x1 (0<x1<w)からくる円形波のすべての変位が点Pで同符号である(強め合う)ためには,すき間の幅wはどのような条件を満たしていなければならないか。 

(3) すき間の幅をw=0からw=2bまで増やしたとき点Pでの波の振幅はどのように変化するか,理由を付けて答えよ。ただしbは問Ⅰ(1)で求めた値である。


今度は点Pは壁の近くにあるとし,壁との距離をLとする。図3-3のように,点Pの真正面にすき間を開ける。そのすき間の幅をゼロから増やしていくと,幅が になったとき点Pでの振幅が最大になった。rをLとλを用いて表せ。
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IIIが難問で上手いことII(2)の知見を活用できるかというところ。基本的に同じ問題の中でも、他の問題間でも似ているものや簡単にしたもの(次数を下げたり、文字を減らしたり、邪魔なものを消したり)を活用できるかが、初めてみる問題への対応力に繋がります。観点としては解法の流用が出来ないか、結果の流用ができないかとしてみてみてください。

I
(1)
干渉なので最終的に光路差を求めることになります。θが同一とみなせる場合には以下の図が成立するため、赤い直角三角形の一番短い辺が光路差、つまり光路差=bsinθ=λ/2となり、b=λ/(2sinθ)です。
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なお、よく教科書とかでみるように三平方で距離を求めてやっても同じ答えになります(やり方によってsinθではなくtanθで出てきますが、θが十分小さいときに同じになります)。

(2)
Pにおける水面の移動はcによるものだけです(複数の波の合成は波の単純な和で表せるので)。よって、cを打ち消すものを探してやればOKです。(1)より、b離れると打ち消すので、Dのx=c+bです。

II
(1)
I(1)のbをx1に変えただけです。よって、x1sinθ

(2)
xが変化するにつれて波の位相は変化していきます。x=0から変化していって同じ符号のままということは、sin波だとすると、位相がπ若しくは0をまたがないということです。プラスマイナスが違うだけなので、x=0の位相を0として考えてやれば、wまでのすべてのxで位相がπまでに入ることになります。よって、
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(3)
(2)の考察より、(2)で求めた範囲内において単調に増えていき、逆符号が入り始めて単調に減っていく(単調減は各点に対してbずれたものが入ってきて打ち消し合っていくため)。
w=0,2bのとき0で最小値
w<λ/(2sinθ)のとき、同符号が増えていくので単調増加
w=λ/(2sinθ)のとき最大値
λ/(2sinθ)<w<2b=λ/(sinθ)のとき打ち消しあう波源が増えていくため単調現象

【参考】積分による考察
各点xから出る波の和は、点の取り方を細かくすれば積分で表される。よって、x=0からx=wまでの全波の和は
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となり、振幅はtに非依存の部分になるので、(3)で挙げたような変動の仕方がわかるというか、グラフでかけてしまいます。
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III
II(3)の知見を活用します。というよりも知見を活用するために考えさせたのがII(3)です。上と同様にスリット内の全波が同符号になれるrが求めるものです。
スリットの区間において、Pまでの距離はLから√(L2+r2)の範囲にあり、しかも図の上下で対称です。これらがぴったりと同符号に入るということは、距離差が位相で言うπに相当するということになります。
つまり、
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東京大学2007年前期物理第2問
図2-1(a)の ように,導体でできた中空の円筒を鉛直に立てて,その中に円柱形の磁石をN極が常に上になるようにしてそっと落したら,やがてある一定の速さで落下した。 これは,磁石が円筒中を通過するとき,電磁誘導によりその周りの導体に電流が流れるためである。磁石の落下速度がどのように決まるかを理解するために,導体の円筒を,図2-1(b)のように,等間隔で積み上げられたたくさんの閉じた導体リングで置き換えて考えてみる。以下の問に答えよ。


まず,図2-2のように,1つのリングだけが水平に固定されておかれており,そのリングの中心を磁石が一定の速さvで下向きに通り抜ける場合を考える。z座標を,リングの中心を原点として,鉛直上向きが正になるようにとる。磁石はz軸に沿って,z軸の負の向きに運動することに注意せよ。

(1) 磁石がリングに近づくときと遠ざかるとき,それぞれにおいて,リングに流れる電流の向きと,その誘導電流が磁石に及ぼす力の向きを答えよ。電流の向きは上向きに進む右ねじが回転する向きを正とし,正負によって表せ。

(2) 磁石の中心の座標がzにあるとき,z=0に置かれたリングを貫く磁束Φ(z)を,図2-3のように台形関数で近似する。すなわち磁束は,区間-b≦z≦-aで0から最大値Φ0に一定の割合で増加し,区間a≦z≦bで最大値Φ0から再び0に一定の割合で減少するとする。ここで磁束の正の向きを上向きにとった。磁石が通過する前後に,このリングに一時的に誘導起電力が現れる。その大きさをΦ0,v,a,bを用いて表せ。

(3) リング一周の抵抗をRとしたとき,誘導起電力によって流れる電流の時間変化I(t)のグラフを描け。リングに電流が流れ始める時刻を時間tの原点にとり,電流の正負と大きさ,電流が変化する時刻も明記せよ。ただし,リングの自己インダクタンスは無視してよい。


次に,図2-1(b)のように,鉛直方向に問Ⅰで考えたリングを密に積み上げ,その中を問Ⅰと同じ磁石が通過する場合を考える。鉛直方向の単位長さあたりのリングの数をnとする。

(1) リングに電流が流れるとジュール熱が発生する。磁石が速さvで落下するとき,積み上げられたリング全体から単位時間当たりに発生するジュール熱を求めよ。

(2) 磁石の質量をM,重力加速度をgとしたとき,エネルギーの保存則を用いると磁石が一定の速さで落下することがわかる。その速さvを求めよ。ただし,このとき空気の抵抗は無視できるものとする。

Ⅲ 
図2-1(a)で,磁石のN極とS極を逆にして実験を行うと,磁石はどのような運動を行うか。その理由も示せ。
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内容自体がすごく簡単な上に、やたらと誘導がついている優れ問です。一校に一問出しておくだけで合格平均点があがります。といったレベルの問題です。当然満点を狙っていきたい問題。

I
(1)
磁束の変化がどうなるのか考えて、それを打ち消す方向に電流が流れるように起電力が生じる。その結果生じる磁場や電流によって生じる力を求める。といういつもの奴です。

近づく場合
上からS極から近づくので、上向きに磁場が増します。よって下向きに磁場が生じるように電流が流れるということですが、右ねじの法則的に図2-2でいう右側が手前に流れることになります。上向きに進む右ねじが回転する向きが正なので、負ということになります。
この時、S極がリングの上にできることと同義なので、反発するため上向き、つまり正の向きの力になります。

離れる場合
N極が下方に離れていくので、上向きの磁場が減少します。よって上記の逆で正の向きに流れます。
この時、リングの下方にS極が出来ることになるので、N極とは引き合うため、上向き、つまり正の向きに力になります。

(2)
誘導起電力の大きさは単位時間当たりの磁束変化量、つまり|dΦ/dt|です。tに関する微分で図2-3ではtではなくz軸なので、dΦ/dt=dΦ/dz×dz/dt=vdΦ/dzとなります。dΦ/dzはグラフの傾きに当たります。よってΦ0v/(b-a)になります。

(3)
(2)で言ったように起電力は傾き×速度vです。電流はオームの法則よりV/Rであり、向きは(1)で考察した通りなので以下の図になります。
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II
(1)
リングが発熱するときはI(3)のグラフでI(t)が0ではない時で、その大きさはRI2です。単位長さ当たりにn本のリングがあるので、電流流れているリングの数は、2n(b-a)になります。よって、
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(2)
エネルギー保存則を使ってとあるので、使います。発熱したエネルギーも含めて保存されます。つまり、(1)で求めた単位時間当たりのジュール熱は力学的エネルギーのロスと同じになります。速さが一定なので、位置エネルギーのロスということになります。よって、高さは単位時間当たりv減るので、
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III
電流の向きは逆になるが磁石が受ける力の向きと大きさは同じになるため、同じ運動方程式になり、同じ運動を行なう。

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東京大学2007年前期物理第1問

バイオリンの弦は弓でこすることにより振動する。弓を当てる力や動かす速さの影響を,図1-1に示すモデルで考えてみよう。長さLの軽い糸を張力Fで水平に張り,糸の中央に質量mの箱を取り付ける。箱は,糸が水平の状態で水平面と接しており,糸の両端を結ぶ線分の垂直二等分線上をなめらかに動くことができる。図1-1(b)のように,糸の両端を結ぶ線分の中点(太矢印の始点)を箱の変位xの原点とし,太矢印の向きを変位および力の正の向きとする。箱の変位は糸の長さに比べて十分小さく,糸の張力は一定と見なすことができる。図1-1(c)のように,箱の上には正の向きに一定の速さVで動いているベルトがあり,箱に接触させることができるようになっている。ベルトから見た箱の速度をベルトと箱の相対速度と定義する。ベルトと箱が接触している状態で相対速度が0のとき,ベルトから箱に静止摩擦力が働く。静止摩擦係数をμとする。ベルトから箱に働く動摩擦力および糸と箱に働く空気抵抗を無視する。


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ベルトと箱が接触していないときの箱の運動を考える。図1-1(b)のように,糸の両端を結ぶ線分と糸がなす角をθ [rad]とする。必要があれば,|θ|が1に比べて十分に小さいときに成り立つ近似式sinθ≒tanθ≒θを用いてよい。

(1) 糸から箱に働く復元力の大きさをF,θを用いて表せ。また,この復元力の大きさをL,F,xを用いて表せ。

(2) 箱に初期変位か初期速度を与えると,箱は単振動をする。単振動の周期TをL,F,mを用いて表せ。


箱が単振動をしているとき,ベルトを一定の垂直抗力Nで箱に接触させたところ,ベルトと箱がくっついている状態と滑っている状態が交互に現れた。箱の変位xが0,箱の速度がV (すなわち,ベルトと箱の相対速度が0)となる瞬間があり,この瞬間を時間の原点t=0とする。t>0で,箱の変位xは図1-2のOPQRP’Q’R’に示すように周期的に変化する(2周期分を示している)。OPは直線,PQは正弦曲線の一部,QRは直線,RP’Q’R’はOPQRのくり返しである。また,直線OPは点Pで正弦曲線O’PQと接している。点Oから点Rまで箱の1周期の運動に要する時間をT’とする。


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(1) 0≦t≦2T’の範囲で,(a)箱の速度,(b)ベルトと箱の相対速度,(c)糸から箱に働く復元力,(d)ベルトから箱に働く静止摩擦力,を表す図を,図1-3の(ア)~(オ)からそれぞれ選べ。

(2) 箱がベルトに対して滑り始める点Pでの箱の変位sをL,F,μ,Nを用いて表せ。

(3) PQ間では,箱は問Ⅰ(2)で考えた単振動と同じ運動をする。箱の最大変位AをL,F,m,V,μ,Nを用いて表せ。

(4) ベルトから箱に働く垂直抗力Nを大きくすると,箱の最大変位Aと箱の1周期の運動に要する時間T’は,それぞれ,大きくなるか,小さくなるか,変わらないか,を理由とともに答えよ。理由の説明に図を用いてよい。


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久しぶりの東大解説です。さすがに出版物(○本)のスキャンはNGだろうと、作図も自分でやっているのですが、問題解いたり解説書いたりするのよりも作図の方が難易度が高いです。そのため、図が本物と多少違っていますがすみません。
テーマとしては物理物理していなくて、バイオリンってこうだったんだと、少し日常よりのテーマです。II(4)が難問ですが、数学的に厳密な証明ではなく、図でごまかしてOKなようなのでそれなりに部分点とかもらえそうな感じです。

I
(1)
図1-1(b)で考えます。図において糸に沿って張力Fの力が箱に繋がっている左右の糸からかかります。対称性からx方向に垂直な力は相殺され、x方向だけ残りますが、このx方向の力は糸ごとに-sinθをかけたものになるので、-2Fsinθとなります。大きさを聞かれているので絶対値をとって2F|sinθ|

(2)
自分の場合、単振動の周期というか単振動全般は運動方程式を立ててその微分方程式形から判断します。
mx''=-2Fsinθ
となりますが、これは単振動の形ではありません。しかし、おそらく振り子で見たことある形であり、似ている形は同じように処理するのが定石なので、問題文にあるように近時をつかいます。
最終的には単振動にしたいので、sinθをxの一次式にするか、x''をθ''の一次式にするかです。ここでは前者で行きます。作りたいものがxでわかっているものはθとLなのでtanθを使います。
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II
(1)
(a)箱の速度は箱の位置の微分(接線)です。図1-2が直線とsinからなることを考えれば、その微分は定数とcosになります。定数の方は0ではないというかVであり、cosはsinで言うとπ/2ずれているので、元のグラフからπ/2ずれた奴を見つけてやります。
前者だけでも、エだとわかります。

(b)つまり箱の速度をvとするとv-Vです。よって(a)を縦にスライドさせたオになります。

(c)復元力はI(2)で近似したように-4Fx/Lです。よってxのマイナス定数倍なのでアです。

(d)静止摩擦力は静止しているときのみ、つまりv-V=0のみ働きます。(b)つまりオで0になっているところのみ働き、それ以外が0のものはイになります。
くそまじめにつりあいの式から相対的に静止している物体が等速運動、つまり力がつりあっていることから、4Fx/L=μNで求めてもいいです。

(2)
滑り始める=静止摩擦力をかかる力が超えるとき、なので、4Fs/L=μNです。
よって、s=μNL/(4F)

(3)
同じ運動をすると宣言しているので、初期条件を代入します。滑り始める時刻をt'としておきます。
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第二式と第三式の位相が同じなので、2乗して1になる公式を使っています。

(4)
まずAですが、見るからにNの単調増加関数です。なので大きくなります。

一方、T'は直線部分と、sin部分を分けて考える必要があります。sin部分は各振動数がNに依存しないため、位相がどの位置に来るか、つまりPの位相に対応するtだけ小さくなり、それに直線部分はPの時間を足してやるだけです(対称性的にこの初めの部分だけ考えればOKです)。
簡単に言えば図のOO'がどうなるかに帰着するということなので、N1<N2とし、Nが変わった場合のサインカーブの位相をそろえて作図してやると、赤>青>緑となることがわかるのでN1よりN2のときの方がOO'が離れており、T'も大きくなることがわかります。
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私のやる気の問題もあって結構説明になってない説明なので、図の細かい数学的な根拠が必要な人は以下を参照してください。

【参考】数学的解法1(上の内容を数学的に無理やり)
本問ではOPはsin部に接するので、Aが大きくなるとその傾きAcosも同じ位相の場合大きくなること、および考えるべき0からπ/2の位相ではcosが単調減少関数であることを考えれば、Aが大きい、つまりNが大きい方がPの位相は大きくなります。
また、同じ位相の場合にはAが大きくなるとAsinも大きくなるため、同じ位相でのxも高くなることがわかります。
さらに、OPにおいて傾きは常に直線よりsinの方が急なので、Pからx方向に進む場合、直線の方がsinよりもt方向に進むことになります。
以上から次の関係式が成立します。N1<N2とし、tOPは直線OPの逆関数、tO'P(N)はNによって決まるサインカーブO'Pの逆関数、s(N)はNによって変化するs、αはN1のときのPの位相をN2のsinに代入した値でs(N1)<α<s(N2)といった感じです。
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言葉で書くのが面倒なので積分の形をしていてややこしいですが、
1行目:∫dtをxで置換積分
1行目→2行目:αにおいて積分を分割
2行目→3行目:αの定義からN2のサインカーブにおいてαになる位相、すなわちO'からのtの変化は、N1のサインカーブにおけるs(N1)となる位相、O'からのtの変化と等しい。
3行目→4行目:第一項の積分範囲に対する単調増加性から、s(N1)<αなので、積分範囲が狭くなると小さい値になる(上の図で言う青>緑の理由)。
4行目→5行目:OO'の形が出てくるので変換
5行目の不等号:積分区間において常に直線の傾きよりsinの方が急、つまり積分のカッコ内が常に正になり、その積分も正(上の図で言う赤>青の理由)

【参考】数学的解法2(Nの関数として表して微分)
角振動数がNに非依存であることから、位相のずれΦとOO'は比例する。つまりΦの単調増加性を示せばよい。単振動の初期条件より
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あんまり考えずにそのまま計算しているせいか結構めんどくさい解法なので、試験中には厳しい感じです(というかどこかで間違っているのではと自分自身疑心暗鬼です)。

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東京大学2007年前期物理解説
東京大学2007年前期物理の解説です。第1問II(4)、第3問IIIと難しい設問があり、ちょっと物理が得意程度の人では満点を狙うのが厳しい内容です。第2問はII(1)でつまずく人もいそうですが、全体的に普通の問題です。

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大阪大学2013年前期生物第4問
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穴埋めは簡単として、問5,6がそれなりに難しく、時間に追われていると困りそうな印象です。

[A]
問1 ア:ホモ接合体 イ:ヘテロ接合体 ウ:優性 エ:劣性 オ:不完全優性
アイ
特に解説の余地はないのですが、homo-っていう接頭語は同種、hetero-は異種って意味があります。

ウエオ
メンデル時代は優性劣性とかの理解でOKでしたが、今日では、その遺伝子が機能するタンパク質を作るか作らないかということでとらえられます。これが問2ですね。

問2
Aaのハエにおいて発現する活性のある酵素の量はAAに比べて少ないとと考えられるが、目を赤くするのに十分な量の色素を合成するのに十分な酵素量であるから。

一方の不完全優性では、十分な量の酵素が確保できないため半端になるもの(半優性)と、ABO血液型のように複対立遺伝子でAもBもそれぞれ機能するタンパク質を作る場合(共優性)が挙げられます。
なお、解答において酵素量を”半分”じゃなく”少ない”と表現しているのは単純に半分になるかが不明だからで、発現量が少ないと転写が促進される場合などもあるからです。

[B]
問3 カ:原基分布図(予定運命図) キ:体細胞

卵においてどこが何に分化していくかは物質の濃度勾配や、周囲の細胞からの刺激などで決まるため、どこが何になるかは概ね決まっており、それを図にしたのが原基分布図です。


特にコメントなし

問4
Xの眼は白色になる。生殖細胞の由来を調べる実験だが、マーカーとなる遺伝子は眼において形質を示すもので、生殖細胞の観察では不能である。そのため、生殖細胞の遺伝子を引き継ぐ次世代で確認する必要があるから。

言うべきことの難易度は大したことはないんですが、言葉いじりが結構大変な感じです。

[C]
問5
AABB卵の後極以外の様々な部位の卵内容物をAAbb卵の前極に移植し、胚盤葉期まで育て、前極細胞をaabb胚の後極に移植する。その結果できた成体とaabbハエの子が白い棒状の眼のみであることを確認する。

正直なところかなり字数制限が厳しいです。パソコンで打っているからいいけど紙と鉛筆だとノイローゼになりそうです。

後極のみというためには、それ以外が全く同じ(コントロール)を作ってやる必要があります。
もうちょっと論理的に考えるなら、これは”因子は後極のみに存在する”、つまり、”後極に因子が存在する”かつ”因子ならば後極にある”という命題を示すことです。
実験2で示していることは"後極に因子が存在する"ということなので、残りの”因子ならば後極にある”を示すことになります。直接の実験はぱっと考えても思いつかなそうなので、こういうときは対偶をとってやります(東大2013年生物第3問IIAbの短足遺伝子の推論もそうでしたね)。
対偶は"後極で無ければ因子はない"となるので、後極以外の様々な部位で同様の実験をしてみる形に成ります(ただし、現実の実験においてはあまり好ましい解ではないです。なぜならば、”後極以外”といった場合には漏れなくすべての部位を本当に調べられるのか疑問が残るからです。0.1mm上ならどうなの?という話です)。

問6
卵内容物は分化を引き起こしているが、眼の遺伝型に影響は与えていないため、細胞質には遺伝する性質がないこと、および、核の遺伝型に影響を与えないことがわかる。

言いたいこととしては、卵内容物が遺伝には関係ないことで、別に難しいことでもないですし、ヒントとして細胞質だの核だのがあるので更に簡単なはずです。あとはどうまとめるかだけですが、これが少しめんどくさい。

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大阪大学2013年前期生物第3問B
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DNAメチル化による発現量の違いに関する問題です。自分はエピジェネティックスをかじっていたので、懐かしい分野だったりします。DNAのメチル化やヒストンのメチル化などの非配列も遺伝し、しかも遺伝やセッティングに性差や親の環境とかが影響してなかなか面白い分野だと思います。
難易度は普通ですが、問5を時間かけずにさくっといきたいところです。

問4 L1:AATTTCGGGT TTATTACGTT L2:AATTTTGGGT TTATTATGTT
日本語をしっかり読めるかのテストです。要するにCGのCが全部メチル化されてる株L1と、全くメチル化されていない株L2があり、メチル化されていないCは(U経由で)Tになるというだけのことです。なので、L1ではCGはCGのままで、L1の残りのCとL2のCはすべてTになるといことです。

問5 促進:A 抑制:G
結果は、健康群より糖尿病群でXの発現が高い(これだけではいえませんがXの発現量増→糖尿病)であり、その原因は二つの違い、つまりS4のメチル化増加とS5のメチル化減少です。
では、メチル化がどう転写に影響するかですが、問題文に書いてあり、メチル化の度合いが増えると転写調節タンパク質は着きにくくなります。
よって、S4とS5に結合する調節タンパク質を結合配列から探してやると(3塩基ぐらいで探して絞り込むとはやいです)、それぞれG、Aが結合することがわかります。
これらはメチル化の変化によってS4には着きにくく、S5には着きやすくなるので、最終的に糖尿病で転写増なのを念頭において考えれば、S4=Gが抑制、S5=Aが促進だとわかります。

問6
一卵性双生児は同一の遺伝子配列を持つため、一卵性双生児間の比較は、遺伝子配列の差異による影響取り除いた上でのDNAメチル化と糖尿病発病の関係を調べるのに適しているから。

一卵性双生児といったらお決まりのようにDNA配列が一緒です。ヒトだとクローンで実験できないので、一卵性双生児でかわりにこういった実験をします。東大付属中が双生児を集めているのはこういった実験をするためだった気がします。

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大阪大学2013年前期生物第3問A
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有名なラクトースオペロンについて問題なのでとっつきやすいはずです。

問1
初めはグルコースのみを代謝しているが、代謝に伴ってグルコース濃度が低下すると、ラクトースオペロンの抑制が解除されて発現されるまでの間増殖が止まり、発現後はラクトースを利用して増殖を始める。

グルコースの方が効率がいいので通常はグルコースを消費します。グルコースが無いときだけ2)にあるように仕方なくラクトースで我慢します。たんぱく質の発現には時間を要するので、これが図における平らな部分になります。

問2 ウ
実線においてラクトース利用の部分がなく、平らになった後の伸びがないものです。ウエで迷いますが、横軸が短時間であることを考えれば、死滅して減少するまではいかないと予測できるため、エは除外できます。

問3
3遺伝子がまとめて転写されるため、lacZの挿入変異によるフレームシフトの影響は他の2遺伝子にも及んでいるから。回復には野生型の3遺伝子を含むオペロン全体を導入すればよい。

【参考】
本問ではラクトースオペロンはグルコースの有無によって発現が決まると書かれていますが、正確な機序としては、ラクトース濃度とグルコース濃度によって決まります。
ラクトースがない場合にはオペレーターにリプレッサーが結合して転写を阻害します。このリプレッサーはアロラクトースというラクトースの変形みたいなのがインデューサーとして結合するとオペレーターから離れて転写を阻害しなくなります。
一方、グルコース濃度が下がると細胞内ではアデニル酸シクラーゼによってATPからcAMPが合成され、このcAMPがCAP(カタボライト遺伝子活性化蛋白質)と結合します。この複合体がラクトースオペロンのプロモーターにあるCAP結合部位に結合し転写を活性化します。逆に言うとこの活性化なしではほとんど起こりません(ほんの少しは起こっているので、前述のアロラクトースによる制御が成立します。アロラクトースはラクトースオペロンの転写産物の1つであるパーミアーゼによって細胞内に流入するラクトースが元だったと思います。)

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東京大学入試問題解説集
予定
死ぬまでに終わるのか謎ですが,とりあえず前期(数物化生)は91年まで,後期(総合科目II、数物化生)は95年までは手元に問題があるので,一応解説する気です。優先的に処理して欲しいものがあったらいっていただければ早めに対応します。

あと,途中で阪大とか京大に浮気しても大目に見てください。
【2017年】
・前期
数学 物理 化学 生物

【2016年】
・前期
数学 物理 化学 生物

【2015年】
・前期
数学 物理 化学 生物
・後期
総合科目II

【2014年】
・前期
数学 物理 化学 生物
・後期
総合科目II

【2013年】
・前期
数学 物理 化学 生物

・後期
総合科目II

【2012年】
・前期
数学 物理 化学
・後期

【2011年】
・前期
数学 物理
・後期

【2010年】
・前期
数学 物理
・後期

【2009年】
・前期
数学 物理
・後期

【2008年】
・前期
数学 物理
・後期

【2007年】
・前期
数学 物理  
・後期

【2006年】
・前期
数学
・後期

【2005年】
・前期
数学
・後期

【2004年】
・前期
数学
・後期

【2003年】
・前期
数学
・後期

【2002年】
・前期
数学
・後期

【2001年】
・前期
数学
・後期

【2000年】
・前期
数学
・後期

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大阪大学2013年前期生物第2問
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本年で一番簡単だと思われる大問です。第1問がそこそこの難易度なので、こういう簡単な問題ははずさないでとっておきたいところです。

問1 1×10-3
算数です。頭の周囲は0.2×πであり、半周(右耳から左耳)するにはその半分なので0.1πです。これを音速で割るので、0.1π÷300=0.001です。

問2 b
1,3からの距離が同じであり、1,3の興奮が同時に届くため、2の閾値を越えるから。

軸索の伝導速度が一定ということは距離=時間ととらえてよいことになります。また、2の閾値は1,3単体では越えられないため同時に伝達される必要があります。

問3
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左右からの距離が異なる組み合わせを5つ作るだけですが、単純に全部の内側上オリーブ核を左右から結んでやるだけです。書き方はあんまり例に習ってませんが面倒なのでこんなんで許してください。

問4 C
正面からの音ということは、音が耳に届くまでの距離、すなわち時間が等しいということなので、両側の蝸牛神経核は同時に興奮します。つまり問2と同じ状態であり、両側の蝸牛神経核から距離の等しいCが興奮します。

問5 D,E
音は左より右に早く達し、蝸牛神経核の興奮も右で早く生じる。左右の興奮が同時に到達する細胞のみ興奮するが、そのためには左に近い必要があるから。

同時がポイントです。簡単に言えば、音の伝達時間+神経の伝導時間、が左右で同じです。なので、音で遠ければ、神経伝導時間=距離が近くなければなりません。

問6 6m/s
音の時間差の最大値は問1より1msなので、これが内側上オリーブ核の各細胞に繋がる左右の距離の差の最大値に該当します。距離の最大値はAE(左右の蝸牛神経核から細胞Aに繋がるものでも、Eに繋がるものでもいいですが)になります。よってこれが6mmなので、1msが6mm、つまり、1秒で6mになります。

問7
左右の耳に達する音の強弱の差
高校物理だと無視されますが、波の強さは2次元なら距離の1乗、3次元なら距離の2乗に反比例します。つまり、遠い方の音が小さく聞こえます。
あとついでに、たぶん高音成分はロスしやすいので少し減ったりもします。

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大阪大学2013年前期生物第1問
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各免疫細胞の役割とその関係の理解とトレランスに関する考察を求める問題で、割と難易度が高いと思います。

[A]
アレルギー、主にI型に関する問題です。

問1 ア:アレルゲン イ:ヘルパーT細胞(Th2細胞、ヘルパーTリンパ球) ウ:インターロイキン(サイトカイン) エ:B細胞(Bリンパ球) オ:肥満細胞(マスト細胞)

ア:アレルギーを引き起こす抗原をアレルゲンといいます。

イ:食細胞などから抗原の提示を受けて免疫系の指揮をする細胞をヘルパーT細胞といいます。

ウ:細胞間の伝達物質をサイトカインといい、そのうちで免疫系に関わるものはインターロイキン(IL)、インターフェロン(IFN)が代表的なものです。ウではB細胞の増殖や分化を促すものなのでインターロイキンになります。

エ:抗体を生産する細胞はB細胞です。

オ:IgEと結合する細胞は好塩基球の一種である肥満細胞です。

【参考】免疫細胞の種類
血液幹細胞
リンパ球などを含めた血液を構成する細胞の元となる細胞。骨髄に存在する。

T細胞
免疫系の制御を担う細胞。Tは胸腺の頭文字であり、胸腺において分化と増殖が行なわれる。大まかな分類として、細胞障害性T細胞(キラーT細胞、CTL)、ヘルパーT細胞(Th)、制御性T細胞(Treg)、ナチュラルキラーT細胞(NKT)などに分かれる。

・細胞障害性T細胞
抗原ペプチドを提示する細胞に対してアポトーシスを引き起こして殺す。

・ヘルパーT細胞
他のリンパ球に作用して免疫反応を活性化させる。ヘルパーT細胞には主としてTh1、Th2、Th17がある。
Th1はCTLやマクロファージを活性化し、細胞性免疫を担い、細胞内寄生細菌やウイルスに感染した細胞を死滅させる。Th2は好塩基球とそれを介した抗酸球の活性化によって寄生虫や花粉症に関与する。Th17は割りと新しく発見されたもので、好中球や上皮細胞に作用し、細胞外の細菌や真菌の除去に関与している。
また、これらは互いに複雑に絡み合った抑制網を形成している。

・制御性T細胞
T細胞の活性を制御する細胞で、特に自己組織に対する寛容において重要な役割を担っており、自己免疫疾患やガン分野において注目されている。制御機能については問6の参考を参照。

・ナチュラルキラーT細胞
ナチュラルキラー細胞とT細胞の両方の性質を持つ細胞。

B細胞
抗体を生産や免疫記憶を担う細胞で、骨髄で分化するのでBです。抗原の存在下では形質細胞に分化し、抗体生産に特化した細胞になる。また、抗原提示細胞の1つでもある。

マクロファージ
食作用、細胞障害活性を示す細胞で、食べたものを完全に消化しないで主要組織適合遺伝子複合体(MHC)によって抗原をリンパ球へ提示する。抗原提示細胞の1つ。

樹状細胞
抗原提示細胞の1つ。抗原の提示することはマクロファージとかと同じだけど、こいつの提示だけ意味合いが違う。こいつからの抗原提示のみがT細胞の分化を促す。

好中球
食作用をもつ細胞で、IgG抗体の定常領域や補体と結合するレセプターを持ち、IgG抗体や補体にとらえられた抗原を除去する。そのため、B細胞の制御下にある細胞である。

好塩基球
IgE抗体と結合するレセプターを持ち、好塩基球に結合したIgEに抗原が結合すると、化学伝達物質であるロイコトリエン、ヒスタミン、プロスタグラジンなどを分泌する。また、好酸球走化因子を分泌して好酸球を集める。組織においては肥満細胞(マスト細胞)。

好酸球
弱い食作用を持つ細胞で、補体やヒスタミンレセプターを有する。ヒスタミンやロイコトリエンなど、好塩基球が出す化学伝達物質を中和する。

ナチュラルキラー細胞(NK細胞)
抗原による活性化なしに細胞傷害性を有するリンパ球。自己と非自己の認識はMHCクラスI(CTLの活性には不可欠)の有無で行なうといわれており、MHCクラスIの発現が低いと攻撃を行なうようである。
がん細胞ではMHCクラスIが発現されない場合が多く、その場合にはCTLによる除去は機能しないため、がん細胞の除去において重要な役割を担っている。

粘膜上皮細胞
IgA抗体と結合するレセプターを持ち、IgAをとらえた後に粘膜側へIgAを輸送し、病原体の上皮細胞への接触を防ぎます。

【参考】アレルギーの種類
アレルギーとは過剰な免疫反応のことで、次の4つに分類されます。
・I型
本問で取り扱った型で、IgEと好塩基球(肥満細胞)によって引き起こされる反応で花粉症や食物アレルギー、気管支喘息、アトピー性皮膚炎などが上げられます。

・II型
IgMやIgGが組織細胞表面の抗原に結合することによって起こるもので、食細胞による食作用や、補体による細胞溶解作用によって組織が傷害されます。血液型不適合輸血、リウマチ熱などが挙げられます。
II型の特殊なケースとしてレセプター特異的な自己抗体が結合して起こるものはV型に挙げられ、重症筋無力症や、バセドウ病が挙げられます。

・III型
免疫反応によってIgG抗体と抗原分子が結合した免疫複合体が組織に含蓄することによって起ります。全身性エリテマトーデスやリウマチ様関節炎が有名です。

・IV型
細胞性免疫による傷害で、Th1とマクロファージによる遅延型過敏反応と、CTLによるものがある。ツベルクリン反応、金属アレルギー、同種間の移植免疫などが挙げられます。

問2
IgE抗体の定常部と特異的に結合して肥満細胞のIgEレセプターとIgE抗体間の結合を阻害する。

問題文にあるとおりIgEと結合するモノクローナル抗体なので、アレルギーの全過程のうちでIgEが関わるところのみが、抑制のターゲットになります。免疫グロブリンは定常部と可変部からなりますが、可変部は名前の通り、様々に変わるため、一種類のIgEに対して一種類のモノクローナル抗体を作らなければならない上、ここに結合するとアレルゲンと同様に作用してしまうため、標的として不適切になります。そのため、Yは定常部と結合し、B細胞から分泌されたIgEが定常部と結合することを阻害することが考えられます(もしくは定常部と結合して可変部をYが覆うことも考えられますが、免疫グロブリンの構造は割りとまっすぐなので除外できます)。

ヒト化抗ヒトIgEモノクローナル抗体を用いた喘息治療薬のオマリズマブ(ゾレア)というのがこれに当たります。
【参考】
通常の抗ヒト抗体はマウスなどで作られる抗体ですが、あくまでもヒトにとっては異物であるため、アレルギーを引き起こしたり、免疫反応によって除去されてしまいます。それでは安全性や薬効に問題があるため、抗原抗体反応の中心となる領域以外をヒトの抗体に置き換えた抗体が望まれます。ヒト化抗ヒト抗体はヒト抗体由来の領域が90%程度以上の抗体のことを言います。それよりヒト抗体由来の領域がすくないものはキメラ抗体などといったりします。

問3
皮内注射した物質Zが肥満細胞のIgE抗体と結合し、肥満細胞から血管透過性亢進作用を有する物質が放出された。その結果、血中に含まれるエバンスブルーが血管外の組織へ流出したから。

肥満細胞からはロイコトリエン、ヒスタミンなどの血管透過性を促す物質が、アレルギー反応として放出されます。エバンスブルーはアルブミンと親和性が高く、アルブミンと共に行動します。つまり、血液(血中のアルブミン)がどのように動いていくかを同定することに使える色素です。今回のケースではその性質を利用して、血管透過性亢進の有無を調べています。

問4
マウスPの血清中に含まれる抗Z抗体が皮下の肥満細胞と結合し、血中に注射された物質Zがこの抗Z抗体を介して肥満細胞の化学伝達物資放出を促した。その結果、エバンスブルーが血管外に漏れ出てきたため。

観点として、対照の認識、つまり何が違うのかは明確に意識しましょう。実験系においては、原因の有無→結果の違いという因果関係成り立っています。なので実験1ならZの存在の有無、実験2ならP血清と正常マウス血清の違い=抗Z抗体の有無です。
後者と問3の内容をミックスすると解答のようなものが推論できます。

[B]
自己寛容(トレランス)獲得の仕組みと自己免疫疾患についての問題です。

問5
自己寛容は、胸腺上皮細胞が提示する自己抗原に対して反応するT細胞を除去又は不活性化することによって獲得される。

本問はネガティブセレクションといわれるもので、T細胞は様々な抗原に対応するためランダムな感じで作られますが、そのうち自己抗原と強く結合するものは有害であるためアポトーシスして除去されます。なお、セレクションは主に生後しばらくの間で行われるため、実験4のような、恐らく生後の移植と思われるものでも免疫寛容は獲得できます。
このほかにポジティブセレクションというものが胸腺でのT細胞成熟過程にあり、ネガティブセレクションの前に行なわれます。ポジティブセレクションでは自己の主要組織適合遺伝子複合体(MHC)によって提示される自己抗原と弱く結合性があるもののみが選ばれ、それ以外は死滅します。これは免疫反応で実際に抗原の提示につかうMHCと結合できるものを選択することになります。
まとめると、自己抗原と強く結合→除去、弱く結合→生き残り、結合しない→除去です。ちなみに中ぐらいに結合すると、制御性T細胞(Treg、昔はサプレッサーT細胞とか言われていた奴?)になります。

上記はT細胞についてですが、B細胞についても骨髄においてネガティブセレクションが行なわれており、自己抗原に反応するB細胞のクローンの大きさは小さく制約されています(あくまで制約なので問6につながります。)。

問6
外来抗原が自己抗原と類似の構造を持つ場合、自己抗原と結合できる抗体が生産されてしまうから。

ネガティブセレクションによって自己抗原と結合できるT細胞はないように思われますが、実は胸腺における抗原の提示量が少ないことなどによって自己と結合できるT細胞なども存在します。
T細胞を介する免疫反応は抗原とT細胞レセプターがあれば際限なしに起こるわけではなく、抗原以外の要因の影響も受けるため、これらの自己結合性のT細胞でも通常は悪さはしないようになっています。
しかし、微生物由来の抗原は免疫反応を引き起こす形で提示されるので(これを免疫原性といいます)、通常通りにその抗体に反応する抗体を生産するB細胞が増殖分化し、抗体がばら撒かれます。その抗体が、自己組織に結合すると、勘違いした食細胞やらは細胞性免疫で自己組織を傷つけます。

【参考】自己寛容性と制御性T細胞(Treg)
ヘルパーT細胞の活性化には抗原特異的シグナルと抗原非特異的補助シグナルの二つが必要であり、そのどちらがかけても免疫応答は進みません。Tregはこれらのうちで補助シグナルを抑制することによって、名前の通り免疫反応を制御します。
補助シグナルを出す分子との親和性はThよりもTregの方が20倍高いため競合的にThとの結合を阻害できる上、補助シグナルを出す分子の発現を抑制します。また、IL-2(T細胞やB細胞などを活性化します)も優先的に受容してTreg自身が増殖するので、他のリンパ球の活性を阻害しつつ抑制能を高めます。
なので、Tregやその増殖に作用するIL-2が無いと簡単に自己免疫疾患になりますし、逆にガンとかではTregが異常に活性化されていたりします。

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大阪大学2013年前期生物解説
大阪大学2013年前期生物の解説です。東大と同様に問題文から考察させる問題が主です。家庭教師で東大生物受験生を教える際には、形式が似ているので東大のアップによく阪大の問題は使ったりします。今年の難易度は多分難しめのセットで、高校生には特に大問1がきつい印象があります(医大生にとっては免疫学で普通に習う内容なので、他の問題よりも逆に楽かも)。

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