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大阪大学2013年前期生物第1問
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各免疫細胞の役割とその関係の理解とトレランスに関する考察を求める問題で、割と難易度が高いと思います。

[A]
アレルギー、主にI型に関する問題です。

問1 ア:アレルゲン イ:ヘルパーT細胞(Th2細胞、ヘルパーTリンパ球) ウ:インターロイキン(サイトカイン) エ:B細胞(Bリンパ球) オ:肥満細胞(マスト細胞)

ア:アレルギーを引き起こす抗原をアレルゲンといいます。

イ:食細胞などから抗原の提示を受けて免疫系の指揮をする細胞をヘルパーT細胞といいます。

ウ:細胞間の伝達物質をサイトカインといい、そのうちで免疫系に関わるものはインターロイキン(IL)、インターフェロン(IFN)が代表的なものです。ウではB細胞の増殖や分化を促すものなのでインターロイキンになります。

エ:抗体を生産する細胞はB細胞です。

オ:IgEと結合する細胞は好塩基球の一種である肥満細胞です。

【参考】免疫細胞の種類
血液幹細胞
リンパ球などを含めた血液を構成する細胞の元となる細胞。骨髄に存在する。

T細胞
免疫系の制御を担う細胞。Tは胸腺の頭文字であり、胸腺において分化と増殖が行なわれる。大まかな分類として、細胞障害性T細胞(キラーT細胞、CTL)、ヘルパーT細胞(Th)、制御性T細胞(Treg)、ナチュラルキラーT細胞(NKT)などに分かれる。

・細胞障害性T細胞
抗原ペプチドを提示する細胞に対してアポトーシスを引き起こして殺す。

・ヘルパーT細胞
他のリンパ球に作用して免疫反応を活性化させる。ヘルパーT細胞には主としてTh1、Th2、Th17がある。
Th1はCTLやマクロファージを活性化し、細胞性免疫を担い、細胞内寄生細菌やウイルスに感染した細胞を死滅させる。Th2は好塩基球とそれを介した抗酸球の活性化によって寄生虫や花粉症に関与する。Th17は割りと新しく発見されたもので、好中球や上皮細胞に作用し、細胞外の細菌や真菌の除去に関与している。
また、これらは互いに複雑に絡み合った抑制網を形成している。

・制御性T細胞
T細胞の活性を制御する細胞で、特に自己組織に対する寛容において重要な役割を担っており、自己免疫疾患やガン分野において注目されている。制御機能については問6の参考を参照。

・ナチュラルキラーT細胞
ナチュラルキラー細胞とT細胞の両方の性質を持つ細胞。

B細胞
抗体を生産や免疫記憶を担う細胞で、骨髄で分化するのでBです。抗原の存在下では形質細胞に分化し、抗体生産に特化した細胞になる。また、抗原提示細胞の1つでもある。

マクロファージ
食作用、細胞障害活性を示す細胞で、食べたものを完全に消化しないで主要組織適合遺伝子複合体(MHC)によって抗原をリンパ球へ提示する。抗原提示細胞の1つ。

樹状細胞
抗原提示細胞の1つ。抗原の提示することはマクロファージとかと同じだけど、こいつの提示だけ意味合いが違う。こいつからの抗原提示のみがT細胞の分化を促す。

好中球
食作用をもつ細胞で、IgG抗体の定常領域や補体と結合するレセプターを持ち、IgG抗体や補体にとらえられた抗原を除去する。そのため、B細胞の制御下にある細胞である。

好塩基球
IgE抗体と結合するレセプターを持ち、好塩基球に結合したIgEに抗原が結合すると、化学伝達物質であるロイコトリエン、ヒスタミン、プロスタグラジンなどを分泌する。また、好酸球走化因子を分泌して好酸球を集める。組織においては肥満細胞(マスト細胞)。

好酸球
弱い食作用を持つ細胞で、補体やヒスタミンレセプターを有する。ヒスタミンやロイコトリエンなど、好塩基球が出す化学伝達物質を中和する。

ナチュラルキラー細胞(NK細胞)
抗原による活性化なしに細胞傷害性を有するリンパ球。自己と非自己の認識はMHCクラスI(CTLの活性には不可欠)の有無で行なうといわれており、MHCクラスIの発現が低いと攻撃を行なうようである。
がん細胞ではMHCクラスIが発現されない場合が多く、その場合にはCTLによる除去は機能しないため、がん細胞の除去において重要な役割を担っている。

粘膜上皮細胞
IgA抗体と結合するレセプターを持ち、IgAをとらえた後に粘膜側へIgAを輸送し、病原体の上皮細胞への接触を防ぎます。

【参考】アレルギーの種類
アレルギーとは過剰な免疫反応のことで、次の4つに分類されます。
・I型
本問で取り扱った型で、IgEと好塩基球(肥満細胞)によって引き起こされる反応で花粉症や食物アレルギー、気管支喘息、アトピー性皮膚炎などが上げられます。

・II型
IgMやIgGが組織細胞表面の抗原に結合することによって起こるもので、食細胞による食作用や、補体による細胞溶解作用によって組織が傷害されます。血液型不適合輸血、リウマチ熱などが挙げられます。
II型の特殊なケースとしてレセプター特異的な自己抗体が結合して起こるものはV型に挙げられ、重症筋無力症や、バセドウ病が挙げられます。

・III型
免疫反応によってIgG抗体と抗原分子が結合した免疫複合体が組織に含蓄することによって起ります。全身性エリテマトーデスやリウマチ様関節炎が有名です。

・IV型
細胞性免疫による傷害で、Th1とマクロファージによる遅延型過敏反応と、CTLによるものがある。ツベルクリン反応、金属アレルギー、同種間の移植免疫などが挙げられます。

問2
IgE抗体の定常部と特異的に結合して肥満細胞のIgEレセプターとIgE抗体間の結合を阻害する。

問題文にあるとおりIgEと結合するモノクローナル抗体なので、アレルギーの全過程のうちでIgEが関わるところのみが、抑制のターゲットになります。免疫グロブリンは定常部と可変部からなりますが、可変部は名前の通り、様々に変わるため、一種類のIgEに対して一種類のモノクローナル抗体を作らなければならない上、ここに結合するとアレルゲンと同様に作用してしまうため、標的として不適切になります。そのため、Yは定常部と結合し、B細胞から分泌されたIgEが定常部と結合することを阻害することが考えられます(もしくは定常部と結合して可変部をYが覆うことも考えられますが、免疫グロブリンの構造は割りとまっすぐなので除外できます)。

ヒト化抗ヒトIgEモノクローナル抗体を用いた喘息治療薬のオマリズマブ(ゾレア)というのがこれに当たります。
【参考】
通常の抗ヒト抗体はマウスなどで作られる抗体ですが、あくまでもヒトにとっては異物であるため、アレルギーを引き起こしたり、免疫反応によって除去されてしまいます。それでは安全性や薬効に問題があるため、抗原抗体反応の中心となる領域以外をヒトの抗体に置き換えた抗体が望まれます。ヒト化抗ヒト抗体はヒト抗体由来の領域が90%程度以上の抗体のことを言います。それよりヒト抗体由来の領域がすくないものはキメラ抗体などといったりします。

問3
皮内注射した物質Zが肥満細胞のIgE抗体と結合し、肥満細胞から血管透過性亢進作用を有する物質が放出された。その結果、血中に含まれるエバンスブルーが血管外の組織へ流出したから。

肥満細胞からはロイコトリエン、ヒスタミンなどの血管透過性を促す物質が、アレルギー反応として放出されます。エバンスブルーはアルブミンと親和性が高く、アルブミンと共に行動します。つまり、血液(血中のアルブミン)がどのように動いていくかを同定することに使える色素です。今回のケースではその性質を利用して、血管透過性亢進の有無を調べています。

問4
マウスPの血清中に含まれる抗Z抗体が皮下の肥満細胞と結合し、血中に注射された物質Zがこの抗Z抗体を介して肥満細胞の化学伝達物資放出を促した。その結果、エバンスブルーが血管外に漏れ出てきたため。

観点として、対照の認識、つまり何が違うのかは明確に意識しましょう。実験系においては、原因の有無→結果の違いという因果関係成り立っています。なので実験1ならZの存在の有無、実験2ならP血清と正常マウス血清の違い=抗Z抗体の有無です。
後者と問3の内容をミックスすると解答のようなものが推論できます。

[B]
自己寛容(トレランス)獲得の仕組みと自己免疫疾患についての問題です。

問5
自己寛容は、胸腺上皮細胞が提示する自己抗原に対して反応するT細胞を除去又は不活性化することによって獲得される。

本問はネガティブセレクションといわれるもので、T細胞は様々な抗原に対応するためランダムな感じで作られますが、そのうち自己抗原と強く結合するものは有害であるためアポトーシスして除去されます。なお、セレクションは主に生後しばらくの間で行われるため、実験4のような、恐らく生後の移植と思われるものでも免疫寛容は獲得できます。
このほかにポジティブセレクションというものが胸腺でのT細胞成熟過程にあり、ネガティブセレクションの前に行なわれます。ポジティブセレクションでは自己の主要組織適合遺伝子複合体(MHC)によって提示される自己抗原と弱く結合性があるもののみが選ばれ、それ以外は死滅します。これは免疫反応で実際に抗原の提示につかうMHCと結合できるものを選択することになります。
まとめると、自己抗原と強く結合→除去、弱く結合→生き残り、結合しない→除去です。ちなみに中ぐらいに結合すると、制御性T細胞(Treg、昔はサプレッサーT細胞とか言われていた奴?)になります。

上記はT細胞についてですが、B細胞についても骨髄においてネガティブセレクションが行なわれており、自己抗原に反応するB細胞のクローンの大きさは小さく制約されています(あくまで制約なので問6につながります。)。

問6
外来抗原が自己抗原と類似の構造を持つ場合、自己抗原と結合できる抗体が生産されてしまうから。

ネガティブセレクションによって自己抗原と結合できるT細胞はないように思われますが、実は胸腺における抗原の提示量が少ないことなどによって自己と結合できるT細胞なども存在します。
T細胞を介する免疫反応は抗原とT細胞レセプターがあれば際限なしに起こるわけではなく、抗原以外の要因の影響も受けるため、これらの自己結合性のT細胞でも通常は悪さはしないようになっています。
しかし、微生物由来の抗原は免疫反応を引き起こす形で提示されるので(これを免疫原性といいます)、通常通りにその抗体に反応する抗体を生産するB細胞が増殖分化し、抗体がばら撒かれます。その抗体が、自己組織に結合すると、勘違いした食細胞やらは細胞性免疫で自己組織を傷つけます。

【参考】自己寛容性と制御性T細胞(Treg)
ヘルパーT細胞の活性化には抗原特異的シグナルと抗原非特異的補助シグナルの二つが必要であり、そのどちらがかけても免疫応答は進みません。Tregはこれらのうちで補助シグナルを抑制することによって、名前の通り免疫反応を制御します。
補助シグナルを出す分子との親和性はThよりもTregの方が20倍高いため競合的にThとの結合を阻害できる上、補助シグナルを出す分子の発現を抑制します。また、IL-2(T細胞やB細胞などを活性化します)も優先的に受容してTreg自身が増殖するので、他のリンパ球の活性を阻害しつつ抑制能を高めます。
なので、Tregやその増殖に作用するIL-2が無いと簡単に自己免疫疾患になりますし、逆にガンとかではTregが異常に活性化されていたりします。
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テーマ:大学受験 - ジャンル:学校・教育

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