ひたすら受験問題を解説していくブログ
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
東京大学2009年前期物理第3問
常温の水は液体(以後単に水という)と気体(水蒸気)の2つの状態をとることができる。どちらの状態をとるかは温度と圧力により,図3-1に示すように定まる。たとえば,水をシリンダーに密封して温度を30℃,圧力を7000Paにしたときは水であり,熱を与えて,温度や圧力を多少変えても全部が水のままである。一方,同じ30℃で,圧力1000Paにしたときはすべて水蒸気である。ただし,図3-1のB点,C点のような境界線上の温度と圧力のときは水と水蒸気が共存できる。逆に,水と水蒸気が共存しているときの温度と圧力はこの境界線(共存線)上 の値をもつ。温度を与えたときに定まる共存時の圧力を,その温度での蒸気圧という。一定の圧力で共存している水と水蒸気に熱を与えると,温度は変わらず に,熱に比例する量の水が水蒸気に変わり,全体の体積は膨張する。単位物質量の水を水蒸気に変化させるために必要なエネルギーを蒸発熱と呼ぶ。

このことを参考にして,図3-2に示す装置のはたらきを調べよう。断面積A[m2]で下端を閉じたシリンダーを鉛直に立てて,物質量n[mol]の水を入れ,質量m1[kg]のピストンで密閉し,その上に質量m2[kg]のおもりを乗せる。シリンダーの上端を閉じてピストンの上側を真空にする。ピストンはシリンダーと密着してなめらかに動くことができるが,シリンダーの上方にはストッパーが付いていて,ピストンの下面の高さがL[m]に なるところまでしか上昇しないようになっている。シリンダーの底にはヒーターが置かれていて,外部からの電流でジュール熱を発生できるようになっている。 以下の過程を通じて,各瞬間の水と水蒸気の温度はシリンダー内の位置によらず等しいものとする。また,圧力の位置による違いは無視する。

todai_2009_phy_3q1.png


20℃での蒸気圧をp1[Pa],30℃での蒸気圧をp2[Pa]と記す。ピストンのみでおもりをのせないときに内部の圧力がp1で,ピストンにおもりをのせたときにp2になるようにしたい。m1とm2を求めよ。重力加速度の大きさをg[m/s2]とする。


圧力p2での20℃の水のモル体積(1mol当たりの体積)をv1[m3/mol]とする。この温度でおもりをのせた状態でのシリンダー内の水の深さd[m]を求めよ。なお,ヒーターの体積は無視できる。


装置全体を断熱材で覆い,ピストンにおもりをのせたまま,はじめ20℃であった水をヒーターでゆっくりと30℃になるまで加熱する。このとき,水の状態は図3-1のA点からB点に移る。20℃から30℃までの水の定圧モル比熱は温度によらず,c[J/(mol・K)]であるとする。水を30℃にするためにヒーターで発生させるジュール熱Q1[J]を求めよ。なお,シリンダー,ピストン,おもり,断熱材など,水以外の物体の熱容量は無視できるものとする。


30℃の水をさらにヒーターでゆっくりと加熱する。このときの温度と圧力はB点に留まり,水は少しずつ水蒸気に変化していく。図3-3のようにピストンがストッパーに達したときにも水が残っていた。B点での水のモル体積v2 [m3/mol]とB点での水蒸気のモル体積v3[m3/mol]を用いて,このときの水蒸気の物質量x[mol]を求めよ。


30℃の水を,その温度での蒸気圧の下で,水蒸気にするために必要となる蒸発熱をq[J/mol]とする。問Ⅳの過程で,ピストンがストッパーに達するまでに,ヒーターで発生させるジュール熱Q2[J]を求めよ。


ピストンがストッパーに達したときにヒーターを切り,おもりを横にずらして,ストッパーにのせる。次にまわりの断熱材を取り除き,18℃の室内で装置全体がゆっくり冷えるのを待つ。

(1) 時間の経過(温度の低下)とともに,圧力がどのように変化するか述べよ。

(2) 時間の経過(温度の低下)とともに,ピストンはストッパーに接した位置と水面に接した位置の間でどのように動くか,動く場合にはその速さ(瞬間的か,ゆっくりか)を含めて述べよ。

todai_2009_phy_3q2-3.png

解説


一瞬化学かと思う状態変化の内容です。物理としてはなじみが薄いですが、化学選択者にとってはよくある内容で、それを物理と絡めた感じで理解しやすかったでしょう。VI以外は東大受験生を馬鹿にしているの?というレベルで簡単なので、落としたくない感じです。VIはパッと思いつかなければ、実際の試験だと無視して化学にでも時間費やした方がいい気がします。

I
圧力はかかる力を面積で割るだけです。よって、
todai_2009_phy_3a_1.png

II
体積はnv1でこれがAdです。よって、d=nv1/A

III
単位からでもわかるとおり、定圧モル比熱にモルと温度差をかけるだけのお仕事です。よって10nc。

IV
素直にxを使って式を立てます。xはmolで、与えられているのがm3/molなので、考えなくとも体積で式を立てるのが自然でしょう。
todai_2009_phy_3a_2.png

V
熱はすべて蒸発に使われているので、qにmolつまりxをかけるだけです。
todai_2009_phy_3a_3.png

VI
こういう問題は微小な変化の繰り返しで考えるとわかりいいです。

外が18℃ということはどんどん熱が奪われていきます。熱が奪われると水や水蒸気の温度が下がるか、液化して水になるかの2択です。
実際には起きないのですが、水と水蒸気が共存したまま、上であげた事象を起こしてみるとどうなるのかわかります。
例えば前者で考えてみると、温度が下がってしまう場合、図3-1ではAとBの間に来てしまいます。こうなると、すべて水でなくてはならないので、存在している水蒸気は液化しようとします。液化の際には、気体状態にある物質量の減少がおこり、圧力がp1をくだらない限りピストンは落ちないため、体積は一定であるゆえ、圧力が下がります(一応この時に熱を出しますが、シリンダー内の総熱量が減少していくことを考慮すれば、発生した熱の少なくとも一部は外に出て行くと考えて差し支えありません)。
よって、図3-1でいう下側に向かって状態が変化します。するとまた共存線にぶつかって、共存状態でいられるところに落ち着きますが、また、熱が奪われるので繰り返しになります。

これが、微小な変化として起こるので、圧力がp1をくだらない限り、共存線に沿って左下にいくことになります。

圧力がp1になると、ピストンの運動方程式的に水蒸気の圧力が下がると、水蒸気圧とp1が釣り合う体積になるまでピストンが下がります。つまり、Cの左に少しでも行こうものなら圧力一定のままで、水になろうとします(実際にはCの左に行ったところで、液化の際に発生する熱で右に押し戻されます。ただ、その熱の一部は外部に逃げるので、その熱の分だけ液化が進む感じです)。

よって、圧力はp1のまますべて液化します。その後は圧力一定で水の温度が18℃まで下がるだけです。

また、この変化は外部に熱が奪われることによって起こるので、熱の移動がボトルネックになります(持っている熱量が同じなら液化と蒸発は平衡状態なので)。問題文にゆっくり冷えるとある通り、というか熱の伝達速度は温度差に比例定数をかけた有限なものなので、上記の変化はゆっくり起こります。

(1)
圧力は共存線に沿ってゆっくりとp1まで低下した後、p1から変化しない。

(2)
ピストンはしばらくストッパーの位置に静止したままであるが、圧力がp1に達して以降はゆっくりと降りていき、水蒸気がすべて液化すると水面に接する。その後は水に接したままである。
スポンサーサイト

テーマ:大学受験 - ジャンル:学校・教育

コメント
コメント
コメントの投稿
URL:
本文:
パスワード:
非公開コメント: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
トラックバック URL
http://jukenkaisetsu.blog.fc2.com/tb.php/210-c80643b0
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
トラックバック
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。