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東京大学2012年前期化学第1問I
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解説


凝固点降下に関する問題で,内容自体は物珍しいものではありません。ほとんどが記述なので,記述の上手さで点が分かれそうな感じです。


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電気陰性度はO>HなのでOが負,Hが正になるように分極します。形については,酸素は非共有電子対を2つ持っており,共有電子対とあわせて4つの電子対をまとっています。これらが互いに反発するので,最も反発が小さい=離れた位置になるように配置しようとすると,酸素を四面体の中心において,各電子対を四面体の頂点に配置した形になります。ちなみに,非共有電子対の方が共有電子対よりも酸素近くの電子密度が高いので,その分反発が強くなります。これが水の結合角がメタンより小さい理由だったりします。


一つのナトリウムイオンに対し複数の水が,水分子の負に帯電している酸素原子とナトリウムイオン間の静電引力によって結合している。

陰イオンへの水和は正に水素原子によってなされます。水和はイオンが近くなることからもわかる通り発熱反応です。この発熱と,結晶格子をばらばらにするエネルギー,つまり吸熱反応の兼ね合いで溶解熱が決まります。


凝固していくにしたがって濃度が上がっていく=凝固点が降下していくので,点Aが凝固開始であり,そのときの濃度が元の濃度です。まずは凝固点降下から質量モル濃度(沸点上昇や凝固点降下は温度変化が不可避であり,体積で計算すると体積自体が変わってしまうため,モル濃度ではなくこちらを使います)を求めます。この際に塩化ナトリウムは電離して2倍の粒子になることをお忘れなく。

1.85×2×x=3⇔x=150/185=30/37

さて,質量パーセントに変換していきます。溶媒を1kgとして溶質と溶液の重さを出して分数にします。
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凝固して析出するのは水だけであり,塩化ナトリウムは溶液部分に残ったままである。そのため,溶液の濃度が上がり,さらなる凝固点降下が起こるから。

ある濃度になると食塩も一緒に出てきます。この混合物を共晶といい,そのときの温度を共晶温度とかいいます。合金とかその辺の分野でよく聞く気がします。


水の析出にともなって濃度が増加し,凝固点がABの様に降下するが,溶液濃度が23%に達するとそれ以上は下がらないため一定となる。これがBCに対応するので-21℃が最低凝固点である。

【参考】共晶
NaClの含有量と温度によってどのような状態があり得るのかを図にしたものを塩化ナトリウムの固-液状態図(相平衡図)といいます。
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23%より低い濃度の不飽和溶液を冷却していくと,不飽和溶液-氷+溶液の間の曲線に達するまで温度は下がり,曲線に達した後は水のみ氷として析出しながら曲線に沿って温度が低下していきます。23%に達すると氷と塩化ナトリウム2水和物が同時に析出していきます。

一方,飽和溶液(23~26%とする)を冷却していくと,不飽和溶液-飽和溶液+NaCl・H2Oの間の曲線に達するまで温度は下がり,その溶解度曲線に沿って塩化ナトリウムのみが2水和物として析出していきます。こちらも,23%にまで達すると,氷と塩化ナトリウム2水和物が同時に析出していきます。

このように氷と塩化ナトリウム2水和物が同時に析出してきたものを,共融混合物や共晶と呼び,そのときの温度を共融点または共晶温度と言います。

【参考】凝固点降下はなぜ起こるのか
高校生向けの回答
まず凝固についてですが,水⇔氷+Qの平衡が成り立っており,ここから熱を奪うと平衡が右に移ることによって氷ができることによるものです。ここで,溶質を加えて溶液にする場合,水の濃度は減少するため,氷になる量が減り,平衡が左にずれます(ルシャトリエ的に考えればOKです)。溶質の濃度が上がるほど,溶媒である水の濃度は減るので,凝固点降下は溶質を多く溶かすほど大きくなります。

一般向け回答
水→氷は発熱反応であり,エンタルピーの変化は負で,乱雑さは減るのでエントロピーは減少しています。よって,定圧変化において変化の方向を決定付けるギブスのフリーエナジーの変化が0になる,つまり平衡となる温度が存在します。
さて,ここで溶媒である水に溶質を溶かした場合に何が変わるかを見ていきましょう。エンタルピーは水→氷なので別に変わりません。一方,エントロピーは純粋な水よりも,溶質が混ざっている溶液であることの方が乱雑さが大きいので,水が凍ることによってエントロピーがより減少することになります。
ΔG=ΔH-TΔSに入れてやれば,水でΔG=0が成立している温度ではΔG>0になってしまい,Gが減少する方向に定圧下では変化することから,水→氷ではなく氷→水の方向に変化することになります。つまり,その温度では平衡に達しないと言うことです。
このことはエンタルピーやエントロピーの温度に対する変化量が無視できる場合に,ΔG=0となるTが,水のときよりも溶液のときの方が小さくなることからもわかります(つまり-TΔSの項において-ΔSが正かつ大きくなるので,同じ項全体で同じ値になるためにはTが小さくなる必要があります)。
ΔG=0となるTが小さくなるということは,凝固点が下がっているということです。
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テーマ:大学受験 - ジャンル:学校・教育

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