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東京大学2012年前期化学第3問II
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解説


吸水性ポリマーの仕組みは知らなければケはわかりにくいが,クの選択肢は明らかに除外できるものが多く易しめです。

たまには趣向を変えて,問題文を順番に見ていきましょう。Hは炭素数が3で,炭素と水素のみから構成されているので,飽和ならば分子量は44です。しかし,問題文には42とあるので,環状も含めて不飽和度は1です。

次に,酸化によって分子量が30増えたIは炭酸水素ナトリウムと反応するので,COOHを持っていると推測でき,分子量の増加分もぴったり,沸点の高さにも合致します。よってIは炭素数3,カルボキシ基のC=O以外に二重結合を1つもつカルボン酸です(環状にはなりえません)。Jは当然カルボン酸ナトリウムです。

Kはカルボン酸とメタノールなので,エステル化されたものと考えられ,カルボキシ基が消費されて沸点が低くなるのも合致します。

臭素の記述から,H,I,J,Kはすべて炭素間二重結合を有する化合物だとわかります。

ポリマーYはJを重合させたものであり,Jは炭素数3で二重結合を一つもつカルボン酸ナトリウム,つまりCH2=CH-COONaのアクリル酸ナトリウムなので,付加重合したYはポリアクリル酸ナトリウムです。

Lは炭酸水素ナトリウムと反応するので,COOHをもち,不斉炭素も有することからC3CH(OH)COOHの乳酸だとわかります。これはグルコースの分解反応によって得られるという記述と合致しています。

MはLの脱水縮合×2なので,OHとCOOHのどこが縮合するかによって,エステル×2か無水酸+エーテルが考えられます。反応の起こりやすさと,開環重合してZになることからもエステル×2がMになります。

カ:
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キ:
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Iは分子間水素結合を形成するが,Kは形成しないから。

沸点の違いは基本的に働く分子間力の違いです。このケースでは酢酸とかと同じで分子間の水素結合です。基本的にカルボキシ基を持っていて,それが分子内の結合に使われたりしない限りかなり沸点が高くなります(マレイン酸(分子内)<フマル酸(分子間)です)。

一方,融点に関しては分子間力に加えて,分子の対称性が重要になってきます。結晶構造は一定の方向性を持っているため,対称性があるものほどどの方向からでも結晶に組み込まれるので,固体になりやすい=融点が高くなります(融点:n-ペンタン≪2,2-ジメチルプロパン,沸点:n-ペンタン>2,2-ジメチルプロパン)。

ク (2)
次のような構造式を有するポリアクリル酸ナトリウムが水を吸うのは,以下の3,4は並行でしょうが,
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1.分子自体が網目構造であり網目に水が入る
2.酸ナトリウム部分が電離し,COOが水和する。
3.COO-電気的反発により網目構造が広がる(膨らむ)。
4.2で電離したNaが水に溶けているので浸透圧が高くなり吸水する。
という機構によるものです。

選択肢を見てみると,
(1)は静電引力ではなく,静電斥力が正しいです。(2)はOK。(3)は凝集ではなく反発。(4)は関係あるのか私には不明。(5)ナトリウムイオンはポリマー内に保持され,ポリマー外から水が移動してきます。


内より外の浸透圧が高くなり,水が浸透したから。

字数制限厳しすぎてキレそうです。クで述べた吸水メカニズム4の浸透圧差が逆転して,ポリマー内部の水が外部に移動します。そのため,吸水性ポリマーでは,尿などの電解質を含む溶液では吸水性能が水と比較して小さくなります。


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サ (3)
ポリマーXはHの付加重合なので,ポリプロピレンです。一方ZはMが開環重合したポリ乳酸といわれる生分解性プラスチックです。
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XはZのようにエステル結合のような化学的に切れやすい結合を持っていません。また,結合が切れてできる生成物はZでは乳酸というグルコースの代謝によってできる物質であり,生物が容易に分解することが出来ます。

一応,選択肢を無理に検討します。(1)揮発はともにポリマーではしにくい上,繰り返し単位で切った分解物では,乳酸であるZの方が揮発しにくいです。確かに還元の可能性はZの方が高いと思いますが,だから何,といった感じです。生物的に酸化されやすいという観点ならば意味がありますけども。(3)はOK。(4)は再重合しやすいならば,分解されても元に戻るので,低分子量にはならないと思います。(5)は可能性としてZの方がOがあるためあり得ますが,無理やり出来てもC=Cが形成されるのではないでしょうか。
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テーマ:大学受験 - ジャンル:学校・教育

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