ひたすら受験問題を解説していくブログ
東京大学2014年前期化学第3問II
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解説


作るもの自体は文3は標準的ですが,カルボン酸の代わりに酸塩化物(酸クロリド)を使うため,なじみのない受験生もいたかもしれません(重問あたりで使っていた問題があった気がしますけど)。また,ケやコは盲点になっている受験生もそれなりにいそうで,サシスは数理能力のない人は引っかかりであり,まずまずの難易度でしょう。
文4では見慣れないものをつくりますが,基本の反応の応用に過ぎないので,丸暗記ではない受験生には何の苦もないでしょう。ソも一見難しそうですが,あまり理解せずに書いても当たってしまう感じです。


ナイロン66なので炭素数が6のアジピン酸がベースです。このOHをClに置き換えます。
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なお,カルボン酸誘導体の反応のしやすさは,Cの電荷がどれだけ+になるかが鍵です。これはカルボン酸の反応がCの+に対しての求核反応が基本だからです。よって反応性としては,
酸塩化物>酸無水物>エステル>アミド
であり,反応性の高いものから低いものへの変換は容易で,逆は難しくなっています。

ケ (4)
縮合の際にはHClが出ます。生成物が溜まると平衡的に不利なのはもちろんのことですが,アミノ基の求核性(+を求める)はNの非共有電子対によるもので,H+濃度が上がるとH+がNに配位結合してしまい,アミノ基の反応性が落ちます。

(1)そもそもZにカルボキシ基はありません。しかもカルボキシ基はpHを高くすると電離して陰イオンになるため,Cの+が減少して,カルボン酸の反応性は低くなります。
(2)(3)初めに述べたように縮合は加速します。縮合速度を抑えるとどうなるかは私にはわかりません。どうなるんでしょうね。
(5)なんのために酸塩化物を使っているのか。
(6)なぜ普通に熱しないのか。

コ (1)
水酸化ナトリウムを溶かすほうが極性溶媒の水だと考えられます。酸塩化物は水に溶けないこともあり,もう一方は有機溶媒ですが,水より重い有機溶媒なので,クロロメタン系です。よって1です。


r<1なので,アミノ基の方が多いということです,よって,全てのカルボキシ基はアミド結合に使われてアミノ基があまります。できる高分子は
N-N-C-C-N-N-・・・・-C-C-N-N
のようになります。もともとあったC-Cの個数はNx/2であり,N-Nの個数はNy/2です。できる高分子に使われるN-NはC-Cよりひとつ多いので,Nx/2+1であり,残りはNy/2-Nx/2-1となります。高分子も加えると全分子数はNy/2-Nx/2です。Ny/2は使えずrを使えとのことなので,
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計算するだけです。
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ス 1.0%
過剰分は
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なので,それありきの変形で計算しましょう。
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アミンと酸塩化物の反応なので,HClがぬけてアミド結合です。また,アクリル酸は二重結合を持つので,付加重合します。アクリル酸(酸-COOHにアクリル基CH2=CH-)を忘れていたら困る問題ですが,以下のような反応になります。
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ソ a:アミド b:イソプロピル
親水っぽい結合なんてアミド結合しかありません。アミノメタンでは温度による溶け方の変化はない(溶けっぱなし)ので,アルキル基の大きさによって溶け方が変わるのだと考えられます(この辺はOH1個だとCが3つまで水に任意の割合で溶けて,炭素数が多くなるほど溶けないことは基本事項かと思います)。

【参考】溶解度の温度依存性
ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)の溶解度の温度依存性に関しては,低温の方が単純に水素結合が切れにくいということだけではなく,疎水性相互作用が高温の方が強く働くことが原因です。
疎水性相互作用は自然界が乱雑な方向(エントロピーが増大する方向)に向かうことに由来しています。一見,疎水基を向け合って凝集することはエントロピーが減少するように思われるかもしれませんが,まわりの水のエントロピーも考えると増加しています。これは,疎水基が水に入った場合に,疎水基付近の水素結合が切れ,水が疎水基をかご状に取り囲む構造(メタンハイドレートも同じようなかごに閉じ込められてますよね)をとり,乱雑ではなく規則的な構造になってしまうからです。このような規則的な構造をできるだけ減らすには,疎水基と水が接する面積をできるだけ減らしてやればいいことになり,疎水基を内側に折りたたまれます。
これのどこに温度上昇が関連するのかというと,定圧定温下ではギブスの自由エネルギーの変化が負になるように世の中はできています。ΔG=ΔH-TΔSであり(Hはエンタルピー,Tは温度,Sはエントロピー),エントロピーの影響は温度が高いほどその絶対値が大きく負です。よって,温度が高くなると,エントロピーが増加する方向に進みやすくなります。つまり,疎水基が集まるほうが有利となります。

【参考】刺激応答性ポリマー(通称:スマートポリマー)
さまざまな刺激に対して応答するポリマーが研究されていて,なかなかホットな分野です。本問で扱われたポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)は32度で溶ける溶けないが変化する温度応答性ポリマーであり,例えば温度変化で薬物放出を制御する素材なんかの研究がされているようです。
他にもpHの変化に応答するキトサンゲル,酵素とpH応答性ポリマーを用いたグルコース応答性ゲル,光応答性ゲルなどさまざまなものがあります。

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