ひたすら受験問題を解説していくブログ
コンデンサー回路のエネルギー収支の問題について

Q1

先日質問させて頂きました際(プロペラの役割(東京大学1996年前期物理第3問))には丁寧なご解答を頂きましてありがとうございました。
再度となりますが、このたびどうかご教示いただきたいことがございまして、メールさせて頂きました。

入試問題としては定番でどの問題集にも載っている「コンデンサーへの充電時の過渡現象とエネルギー収支」について質問させてください。
(起電力Vの電池にスイッチをはさんで抵抗RとコンデンサーCが直列につながれた問題です)


エネルギー収支として、
十分時間が経った後は
・コンデンサーに蓄えられたエネルギーはCV^2/2
・電池のした仕事はCV^2
・コンデンサーには電池のした仕事の半分のエネルギーしか蓄えられていないが、残りは抵抗 Rを電流が流れるときにジュール熱になった
と説明されます。(微分積分を使った数式で定量的に説明されている参考書も多々あります)

ここでずっと疑問なのですが、もし抵抗なしで回路を組んだ場合(数学的にR=0の場合)はどうなるのでしょうか?
※現実的にはR=0はないというようなことは今回考えず、あくまで理想的な物理モデルを仮定した場合を考えたいのです。
 空気抵抗や摩擦を無視する、とかと同じようなことです。


【疑問点1】
数式でも考えたのですが、いろいろとおかしなこと(?)がおこります。
たとえば、スイッチをつないだ瞬間はI=dq/dt=∞になりませんか? これでいいのでしょうか?
また、任意の時刻tでの電流Iはどうなるのでしょうか?(縦軸I(=dq/dt)、横軸t のグラフはどうなるのでしょうか?)


【疑問点2】
十分時間が経った後のエネルギー収支はどう考えればよいのでしょうか?
コンデンサーに蓄えられたエネルギーはCV^2/2(?)
電池のした仕事はCV^2(?)
残りのエネルギーは抵抗Rがなくジュール熱とならないので消えた? あれれ?おかしいぞ??



この疑問は多くの(ハイレベルな)高校生が抱いているのではないかとも思います。
高校範囲外となってしまってもかまいません。例えば微積物理は「物理入門」で鍛えましたのでついていけます。
詳しい解説をどうぞよろしくお願いいたします。

A1


結論から行くと,蓄えられたエネルギーはCV^2/2にならないのではないでしょうか。電磁波によるロスが無ければ振動して最大値は2CV^2だと思います。二つのモデルを考えてみました。

【モデル1】
疑問点1で考える際に,電子は無限の速さで流れません。疑問点2で触れる電磁波によるエネルギーロスや,モデル2における自己インダクタンスを考えない場合も,単振動になって,最大の蓄えられるエネルギーは2CV^2になる気がします。
電子の運動方程式を立てて考えてみると(銅線の長さはlで一様に電場がかかるとします。この仮定は何か怪しい気がします。),
QA_phy_1_1.png

単振動になり,Iが最大になるのはa=0であり,その時はQ=CVです。ここは振動の真ん中なので,Iはその後も流れます。つまり二倍の2CVまで溜まるのではないでしょうか?2CV送り出した時は電池の仕事=2CV^2 であり,コンデンサーの仕事も同じになってエネルギー保存則を満たします。

【モデル2】
回路自体の自己インダクタンスを考えれば,LC回路になるので,これも単振動になります。さらに,電磁波によるエネルギーの消失もあるので,厳密には抵抗が0であろうが減衰振動になるのではないでしょうか?

単振動ととらえた場合にも,自己インダクタンスで初めは電流が流れず,コンデンサーがマックスの時に電流が0となることから,
QA_phy_1_2.png

となって最もコンデンサーに電荷がたまった際には2CVの電荷です。

減衰振動になった場合は,減衰することによってたまった際のコンデンサーの最大エネルギーが下がる,すなわちその時の電圧も下がってしまうため,電源に対する反発力が足りません。そのため,最大のQは徐々に下がっていき,最終的には電源と釣り合うところで止まるかと思います。

Q2

ご回答ありがとうございます。

以下に私の考え方を書かせていただきます(どこかが間違っているはずですが、どうしてもわかりません)。

まずR=R(有限)の場合を考えて普通に回路方程式(キルヒホッフ第二)を立てて解き、
I(t)=dq(t)/dt=V/R・exp(-t/RC)を導きます(ここまではどの参考書にも載っており、I-tグラフも減衰曲線)。
ここでR→0では、スイッチをつないだ瞬間t=0のときI→∞となり、その後はIは∞から一気に下がるというI-tグラフ(尖った関数)を考えました。

多くの高校生は安易に(?)上記のように考えると思うのですが、これはやっていることがおかしいのでしょうか?
おかしいとしたらどこがおかしいのでしょうか?この考え方では電流Iの単振動がどうしても出てきません。
※今回はあくまでもR=0、L=0のコンデンサー充電回路を仮定しているので、モデル2のようなLC回路による単振動は考えません。

・・・非常に難しいです。何が正解なのかわからなくなってきました。

A2


求めている式自体がR=0で成立しないのはR=0で割っているので定義されないためです。極限は極限なので,R=0で不連続な関数になっていればR=0のときの値は求められません。求められるのはRがものすごく小さい場合,つまりRが存在する場合のことです。このときI→∞になります。

しかしながら,R→0(=0ではなく)でI→∞になるということに関しても否定できます。モデル1で見たように,電子には質量があり,一瞬で無限の速さまで加速することはありえません(また,相対性理論により光速に近づくにつれて,加速に必要な力も∞に近づきますので,時間をかけようが光速は突破できません)。
それにもかかわらず,V=RIが成立すると仮定していることは,その導出である

0=eE-kv (kは抵抗の定数)

を前提としており,電子はすでに加速済みのところでしか考えていません。通常の問題においては加速までの時間が無視できる範囲で,かつ,抵抗がvに比例する範囲にvに収まっているということでしょう(導体中の電子の流れはとてつもなく遅いです。自由電子の密度nがわからないので求めにくいですが,1Aって1秒でたったの1Cなので,大して移動しません。)。

Q3


・やはり【モデル1】の結論である「振動」が答え?
・ジュール熱ないので(放射エネルギーさえ無視すれば)エネルギー散逸ないので振動し続けて定常状態としてのいわゆる「充電」はできない? 
・もし「振動」が解ならば、(ミクロ視点の電子の運動方程式からではなく)マクロ視点の回路方程式から電流Iの振動解をどのように導出するか?

A3

我々の知っているマクロの法則というのがそもそもオームの法則を前提としているので,限定的な条件(Iが小さい)でしか成り立ちません。
なのでそこから考えることになります。
その際に電流が電子の運動であるというミクロの事象は使わざるを得ないです(やっていることは見かけが違うだけで上の回答と同じ)。

抵抗なしの導線に電池Vをつないだ時のエネルギー保存則から,
QA_phy_1_3.png
となります。ここでは電流が電子の速度に比例するというミクロの事象を使って,抵抗によるロスなく,電池の仕事=電流の運動エネルギーを考えています。
両辺を微分すると
QA_phy_1_4.png
となり,無抵抗の法則が得られます。これがオームの法則の代わりになる法則です。

これを用いて電圧降下の式を立てると,
QA_phy_1_5.png

となって,単振動の式が得られます。

オームの法則的に用いましたが,コンデンサー付きでエネルギー保存則を立てて微分しても結果は同じです。
QA_phy_1_6.png

上記から抵抗によるロスがなく,電池の仕事は電流とコンデンサーのエネルギーになると考えると単振動になります。
普段のオームの法則はこの電流のエネルギーを無視している感じです。
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テーマ:大学受験 - ジャンル:学校・教育

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